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マクロスなのは 第19話『ホテルアグスタ攻防戦 後編』←この前の話 『マクロスなのは』第20話「過去」 オークションが終わって隊長陣の警備任務が解けた頃、地上部隊の技研の調査隊がすでにガジェットの破片の調査を開始していた。 「・・・・・・えっと、報告は以上かな?現場の調査は技研の調査隊がやってくれてるけど、みんなも協力してあげてね。あとしばらく待機して何もないようなら撤退だから」 普段の動きやすい青白の教導官の制服に戻ったなのはが、フォワードの4人を前に告げる。 ティアナ達は返事をすると、きびきびと陸士部隊の土嚢の撤去や調査隊の手伝いに散っていった。 (*) ホテル内の喫茶店 そこには警備を終えて一息入れているフェイトとはやて、そしてオークションが終了して手持ち無沙汰になったユーノが仲良く談笑していた。しかし、そこで少し寂しい話題が提供された。 「そう・・・・・・ジュエルシードが・・・・・・」 「うん。局の保管庫から地方の施設に貸し出されてて、そこで盗まれちゃったみたい」 「そっか・・・・・・」 寂しそうな顔をするユーノ。仕方ないだろう。彼がその災悪の根源であるジュエルシードを掘り出した張本人なのだから。 「まぁ、もちろん次元の海は本局が目を光らせているし、地上も私たち六課が追っていく。だから必ず見つかるよ」 「・・・・・・うん。ありがとう」 そこに、この話題には沈黙を決め込んでいたはやてが話に介入してきた。 「・・・・・・実はまだ非公開なんやけどな、この前ガジェットについての報告書が回ってきたんや」 元々物理メディアだったらしい。ホロディスプレイに表示される報告書の表紙。提供は地上部隊・技術開発研究所。しかし表紙には『SECRET(シークレット)』の印が押されている。 「・・・・・・これって僕が見てもいいのかな?」 ユーノが戸惑いながらはやてに聞く。SECRET(機密)の印が押されている書類は規定では管理局の佐官以上でなければ閲覧すらできない。 フェイトですら一等海尉なのに、管理局員でもない民間人に見せていいものではないはずだった。 「大丈夫や、問題あらへん。どうせもうすぐ公開される。・・・・・・でや、まずこの動力機関なんやけど、どうやら簡易化されたジュエルシードみたいなんや」 「「!!」」 「どうやら泥棒さんはジュエルシードの簡易量産に成功したみたいやな」 ホロディスプレイに映し出されているバッテリーに相当する部分の中枢は、ジュエルシードに間違いなかった。 「でも悲観することはあらへん。これと同時にガジェットの製作者も判明した。それが現在、違法研究で広域指名手配されているこの男─────」 ホロディスプレイの画像が切り替わる。瞬間、フェイトの顔色が変わった。 「スカリエッティ!?」 「ん?フェイトは知ってるの?」 ユーノが問う。 「うん。なのはが次元航行部隊、機動課(ロストロギア探索を主な任務にする部隊)に協力していた5年前に。その時、なのはとヴィータ、それと私で彼の秘密基地を強襲したの───── ────────── フェイトは何十体目になるだろう魔導兵器をバルディシュで一閃のもとに葬ると、周囲を見渡す。 周りには太古の遺跡があり、岩でできた建造物が朽ちている。 またすでに魔導兵器の大半は撃破されて、雪の積もる大地に遺跡同様構成部品をさらしていた。 「ヴィータちゃん!」 「おうよ!」 「「これでラストォォ!!」」 上空からのヴィータの魔力球が敵を囲むように着弾。追い詰められて集まった敵を、続くなのはの砲撃で全て葬った。 「ナイスショット。2人とも!」 フェイトの掛け声に、なのはとヴィータはハイタッチした。 (*) 「さて、ここが入り口だね」 フェイトの撫でたその扉は鋼鉄製で、なのはの砲撃でもなかなか破れそうにない程に頑丈だった。 しかし押しても引いてもダメ。無論スライドさせることもできず、開けられなかった。当然だが鍵がかかっているようだ。 「『鍵開け』するから、2人は周りの警戒をお願い」 「うん、お願いね。フェイトちゃん」 「周りは任せときな」 ヴィータとなのははそれぞれ別方向に飛んでいった。フェイトはそれを見送ると高ランク魔法である『鍵開け』を実行する。 この魔法は電子ロックから物理的な鍵までほぼすべての鍵に有効だが、時間がかかるのが難点だった。 フェイトが動けないそんな時、それは起こった。 「なのは!後ろ!」 「え・・・・・・!?」 ヴィータの警告に振り返るなのは。彼女はその半透明の何かを見切ると間一髪で回避。空に退避する。 そしてそれはヴィータの放った鉄球によって大破、沈黙した。 しかし姿を晒したそれが足の付いた地上型だったことや、それが撃破された安心感でなのはは1つの可能性を見逃していた。 『地上型がいるなら、理論上より簡単に姿を消せる航空型がいるかもしれない』と言うことを。 寸前で気づいたなのはは、優秀の一言に尽きる。そして普通の状態であれば問題なく回避できたはずの攻撃。しかし溜まった疲労は彼女の回避行動を寸秒遅らせた。 「「なのはぁぁぁ!!」」 フェイトは確かに見た。空に浮かぶなのはの、小さな体を貫く刃を。 彼女の赤い鮮血によって目視出来るようになった鋭い刃はまるで悪意の塊が友人の体から〝生えた〟ように見えた。 それは人間ならば絶対傷ついてはならない器官の納まっている胸の真ん中から生えていた。 次の瞬間には彼女の体は5メートルほど落下。その衝撃は雪が受け止めるが、ドクドクと怖いほど流れ出る鮮血が雪を染めた。 力なく横たわる大親友の姿と半泣き顔になって彼女に駆け寄るヴィータの姿がぼやけていく。 目の前の光景に現実感が失せていき、いつの間にか視界はブラックアウトしていた。 ────────── 「そんなことがあったんだ・・・・・・」 ユーノが呟く。 この案件は『TOP SECRET(最高機密)』とされていて、彼女の経歴を見てもその事実は確認できず、半年近い入院期間は『持病の悪化に伴う病養』となっている。 そのため家族など極めて親しい者しかこの事実を知らなかった。 だがここで1つ疑問が浮かぶ。 『なぜたった1人の撃墜をそうまでして隠さねばならないか?』という疑問が。 実はすでに流星の如く突然現れ『エース・オブ・エース』という二つ名で呼ばれていたなのはは世間一般に知られ、ヒーローとして祭り上げられていた。 事実それだけの実績もあったし、実力もあった。クラスSのリンカーコアを有しているいわゆる超キャリア組でも、たった14歳で一等空尉に登り詰めるのは容易ではない。 その頃のフェイトやはやてですら、両名とも地上部隊で三尉相当の階級であったことが比較としては適当だろう。(しかし断じて2人が無能な訳ではない。フェイトの所属する本局は事件が少なく、1発が大きい。はやては上級士官を目指し、ミッドチルダ防衛アカデミーの学徒となっていたためだ) そんな出世街道まっしぐらで国民的人気を誇る彼女が撃墜され、瀕死の重傷を負ったのだ。 それがどんな理由であれ公表されれば、管理局全体の士気と信用に関わる。こうなると管理局としては隠さざるをえなかった。 「そう。なのはは今でこそ元気に振る舞ってるけど、一時は「二度と歩けないんじゃないか」って言われて・・・・・・」 俯くフェイト。その背中からは、なのはを撃墜したスカリエッティに対する負のオーラが立ち昇っていた。 「それにあいつは母さんの─────プレシア母さんの研究を続けているらしくて、それがわたしには許せないんだ」 フェイトの母であるプレシア・テスタロッサは、かつては管理局の大魔導士として日夜研究を続けていた。 しかしある日、彼女の実の娘であるアリシアを事故で亡くしてしまった。そこで悲しみに暮れた彼女が手を出したのが禁忌の技術として知られる全身のクローン技術と人造魔導士技術だった。 こうして誕生したアリシアのクローン、それが彼女『フェイト』だ。しかし結局プレシアには受け入れてもらえず、とても悲しい思いをしていた。 「・・・・・・まぁ、とりあえずガジェットの製作者はそのスカリエッティや。ゴーストは第25未確認世界の元の設計から反応エンジンを主機に据えた独自のものらしい。「使われてるオーバーテクノロジーと設計が管理局から漏れたのか?」って揉めてるみたいやけど、当面六課はスカリエッティの線で追っていく。だからユーノくんは無限書庫で関連しそうな情報を調べて欲しいんや」 (そうか。わざわざ機密を聞かせたのはそういうことか) ユーノは納得すると、その依頼を引き受けた。そこに1人の女性が喫茶店の入り口に現れた。 「あ、なのは・・・・・・」 「久しぶりぃ~ユーノくん、元気だった?」 その笑顔に一点の曇りなく、さっきのフェイトの話が嘘だ。という錯覚をおぼえた。 「あ、なのは丁度よかった。これから交代しに行こうと思ってたところなんだけど、交代できる?」 「うん。フォワードの4人は調査隊と陸士さん達の手伝いに行ってるから見てきてあげて」 「わかった。はやても行こう」 「了解や。じゃあお2人さん、〝ごゆっくり〟ぃ〜」 はやてはそう意味ありげに言って外に出ていった。 (はやてここでそのセリフじゃ気まずいよ~!) こころの中で涙声になってしまう。 2人っきりの現状でそのセリフを吐かれては、どうしても彼女を意識してしまうではないか! それについさっきまでその彼女の話をしていたのだ そうでなくとも相手は意中の女性であるというのに・・・・・・ その想いを本人はともかく、周囲に隠し果せているつもりの青年は 「いってらっしゃ~い」 と見送るなのはに視線を向ける。―――――と同時に彼女が振り返った。 「本当に久しぶりだね!ユーノくん!」 「う、うん・・・・・・」 (ダメだ!まともに顔見られない~!) しかしいつまでもこうしているわけにもいかない。相手がいつも通り接して来てくれている以上、こちらもそれに応えなくては嘘だ。 ユーノは何とか自分に言い聞かせながら顔を上げる。 するとどうだろう?なのはもこちらの事を直視しているなどということはなかった 彼女は少し視線を逸らしつつ、頬を赤らめて口を開く。 「えっと・・・・・・今日は偶然、なのかな?」 (か、可愛い・・・・・・) ユーノはそんな幼なじみの仕草に無意識のうちに胸を高鳴らせていた。だがお互いに意識し合っていたらしいことがわかって反対に落ち着くことができた。 「うん。そうだと思う。聖王教会の騎士カリムからの直々の依頼でね」 カリムによれば、どうやらはやてが 「考古学者さんを探しているんだけど、いい人紹介してくれない?」 というカリムに自分を紹介したらしかった。 「それにオークションの鑑定も本命の1つなんだけど、騎士カリムはこの玉の調査を「どうしても」ってお願いされたんだ」 ユーノの手にはさっきフェイトが落下から救った紫色の水晶が乗せられていた。 (*) 所変わってはやてとフェイトの2人は出入り口の玄関で2人の人物と鉢合わせしていた。 「お、アルトくんにさくらちゃんやないか」 「よぉ。やっと見つけたぜ」 「なんや? 探しとったんか?」 はやての問いに、さくらが答える。 「はい。ちょっと今回の敵がどうも妙だったので、そちらはどうだったのかな?と思いまして」 「そっか・・・・・・実はこっちも妙な報告が上がって来ててな。立ち話もなんやし、もっかい喫茶店に行こうか。フェイトちゃんは外の方をよろしく」 ことの成り行きに戸惑うフェイト。なぜなら今あそこは───── 「・・・・・・それはいいんだけど、今喫茶店に行くのはちょっと・・・・・・」 「あ、そうや。なのはちゃんが─────」 「お、なのはもいるのか。丁度いい。頼みたいことがあったんだ」 スタスタ・・・・・・ 喫茶店に向かって歩いていく2人。それを見たはやては人生でそうない大ポカをしたことを悟った。 5日前にカリムにユーノを紹介したのも実は伏線だった。 カリムにその日 「ある〝物品〟の調査ができそうな人と、ホテル『アグスタ』のオークションで鑑定してくれる人を探しているのだけど、いい人知らない?」 と問われたはやては、迷わずユーノの名を出していた。 能力面になんの問題もなかったし、なにより都合がよかった。ユーノはなのはの撃墜事件以降お互い顔を合わせた事がない。 それはなのはが 「こんな姿を(彼に)見せて心配させたくない」 と言ったことにある。 またユーノも、以前地上本部ビルで偶然会った時、仕事の都合でなのはと全く会えないと嘆いていた。 そこではやてはお節介かもしれないがこんな方法をとったのだった。しかし───── (どないしよう!?2人をくっ付けるなんて簡単やと思っとったのに!) そう、このままアルト達が行けばせっかくの2人きりの雰囲気が台無しになる。 はやての頭はフルドライブ。脳内緊急国会を召集、急いで審議が始まった。 第1案、今すぐ呼び止める。 しかし野党の 「何か言い訳はあるのか?」 という反論と牛歩戦術によってタイムオーバー。廃案。 第2案、なのは達を通信で呼び出す。 衆議(直感)院は通過。しかし有識者(理性)会である参議院が 「それでは本末転倒ではないか!」 という理由で否決。衆議院での再可決は見送られ廃案。 第3案、本当のことを話す。 内閣は衆議院解散(思考停止)を盾にごり押し、参議院を通過させる。しかし肝心の衆議院の大多数が 「なんか嫌な予感がする・・・・・・」 と独特の理由で難色を示し、否決。廃案となった。 それによって脳内人格八神はやて内閣総理大臣は伝家の宝刀を行使。衆議院を解散した。 こうして思考停止に陥った〝はやて〟は、『これだから人間は何にも決まらんのや!』と自らの脳内人格(政治家)達を批判する。そして───── (ええい!もう、なるようになれ!) 彼女はついに最終手段である神頼みに入った。 (どうかお願いします。神様、仏様、夜神月様─────あれ?) しかし天はご都合主義(クリスマスも祝うし、正月には神社・お寺に参拝に行くため)で基本的に無信教の彼女を見捨てていなかったようだ。 なんとアルト達が乗ろうとしていたエレベーターになのはとユーノの2人が乗っていたのだ。 「あれ?どうしたんだ?喫茶店にいるんじゃなかったのか?」 「ああ、うん。そうなんだけど人がいっぱい来ちゃって、席が足りないみたいだったから出てきたの」 なのはのセリフを聞いた時、はやては神の存在を信じたという。 自分達が席を離れた時、まだ客は自分達しかいなかった。でなければ、公衆の場で堂々と機密情報の漏洩などやれるはずがない。当に神のみわざといえるピンポイントさだった。 「そうですか・・・・・・どうしましょうアルト隊長?機密もありますし、ここはまずいと思いますが・・・・・・」 「う~ん・・・・・・」 頭をもたげるアルト。胸をなでおろしていたはやては彼らに他の場所を提案した。 「じゃあヴァイスくんのヘリに行こう。あそこなら機密も保てるし、この人数でも十分や」 この案は即採用され、新人たちの所へ行くフェイト以外はヘリに向かった。 (*) 「―――――で、お前は誰なんだ?」 ヘリに入るとアルトは単刀直入にユーノに問うた。 「彼はユーノくん。私達の幼なじみで、管理局の情報庫である無限書庫の司書長をしてるの」 「なるほど。俺はフロンティア基地航空隊の早乙女アルトだ。ついこの前まで六課で世話になってたんだが、異動になってな。よろしく」 「こちらこそよろしくお願いします。・・・・・・ところでそちらの方は?」 ユーノがフロンティア基地航空隊のフライトジャケットを着た黒髪の少女を示す。 「彼女は俺の小隊の2番機を務める工藤さくら三尉だ」 「はじめまして、真宮寺・・・・・・いえ!工藤さくらです」 なぜかは知らないが彼女がいつも使う偽名を名乗ろうとしたが、アルトが先に紹介してしまったことに気づいたのか軌道修正した。 一方ユーノはなぜか『なるほど』という顔になった。 「はじめまして。やはりあなたがあの〝工藤家〟の当主になられたさくらさんですね。騎士カリムからお話は伺っております」 ユーノがおずおずと頭を下げる。 「そんな、頭をお上げになってください。あたしそんなたいそうな者ではありません。ただ工藤家に生まれてきただけの小娘ですよ」 (工藤家?あいつの家そんなに有名なのか?) しかし周りを見ると六課のみんなも知っていたようだった。 そこでよく知っていそうなはやてに念話を送る。 『(すまん。水をさすようだが、工藤家ってなんだ?)』 『(・・・・・・なんや知らんかったんかいな。通りでさくらちゃんを普通に使ってると思った)』 すると彼女は懇切丁寧に説明してくれた。 工藤家とは100年前のミッドチルダ、ベルカ間の全面戦争を終わらせた者の末裔らしい。 元々聖王教会とはその彼らが作ったもので、伝承によれば今では主神として祭られている聖王の力を借りて戦争を終わらせた。 聖王は当時の核兵器や衛星軌道兵器、ベルカ側陣営による隕石の落下すら無力化し、この地に平和を呼び込んだという。 映像や写真すら残っていないが、小学校の教科書にすら載っているこの実績ある神を崇める者も少なくない。そのため聖王を使役した工藤家は代々神との対話役として大切にされていた。 そして工藤家は管理局の魔導士になることが伝統とされており、彼女をバルキリー隊へ推薦をしたのは聖王教会らしい。 さくらはこの工藤家の末裔で、両親が早くに事故で死んでしまっていた。 そのため聖王教会に所属する騎士カリムは工藤家最後の1人になってしまった彼女の身を案じているという寸法だったらしい。 また、あの偽名も工藤家という事を隠したかったのだろう。との事だった。 (育ちがいいとは思っていたが、まさか本物のお嬢様とはな・・・・・・) アルトは彼女のトレードマークである大きな赤いリボンで結わえた麗しい黒髪を見た。するとそれが右に流れていき、さっきまであった場所が少し赤く染まった肌色に変わった。彼女が振り返ったのだ。 「・・・・・・どうしました?」 「いや、なんでもない。それでな、はやて、こっちではゴーストの連中と交戦に入ったんだがいつもより動きが良かったんだ。ここまでは聞いてるか?」 「うん、シャマルから報告は受けとるよ。なんでも賢くなったとか」 「そうだ。それでうちの3番機が早まって特攻しやがった。そしたら奴らどう対応したと思う?」 アルトの問いかけになのはが 「普通に考えたら迎撃だと思うけど、違ったの?」 と問い返す。 「違うんだよ。アイツらギリギリまで逃げて、激突寸前に自爆しやがったんだ。お陰でバカなまねした3番機は無事だったんだが、どうも解せねぇ」 「なるほど・・・・・・」 はやては腕組みしながら自らの考えを更に補強した。 今回ガジェット達を操作した召喚士は、本気で人死(ひとじ)にが出ることを恐れているらしい。 でなければ無人機とはいえ〝タダ〟ではないはずだ。トチ狂った敵のために自爆など、そうそうできることではない。 「聞いた話によればそっちも何かあったみたいだが、何があったんだ?」 アルトの問いに、はやてはガジェットの非殺傷設定と戦闘員への選択的攻撃について話す。 「─────と、こういう訳で陸士部隊の被害が少ないのや」 はやてはヘリの窓から近くに設営されている野戦病院を指さす。 確かにそこにいる陸士達はいずれも軽傷で、陸士部隊の救急搬送用のドクターヘリも駐機したまま、飛び立つ様子はなかった。 「でもおかしいよ。目的がわからない。こっちの被害がないんじゃ『本気を出せばこんなんなんだ!』って言いたい訳じゃなさそうだし・・・・・・」 ユーノの言に、なのはも 「そうだよね・・・・・・」 と同意する。 「やっぱり、シグナムが言っとった車上あらしが怪しいんかな・・・・・・」 はやての呟きに視線が集まる。 「どんな車上あらしだったの?」 「うん、実はな、人間じゃなくて召喚獣や使い魔らしいんや」 はやてはシグナムからの報告を全て話した。手法から撤退まで。ちなみにトラック自体は盗難車であることがわかっていた。 「この流れで行くとその召喚獣が本命っぽいね」 「でも、何を盗んだのかわからないのが困りますね」 「「う~ん・・・・・・」」 一同頭を捻るが、そこまでだ。 ホテル側やシャマルとシグナム、そしてAWACSに聞いてもそれ以上の情報はなかった。 こうなると、今後は調査隊の報告を待つしかなさそうだった。 (*) 「ところでアルトくん、なんかなのはちゃんに頼みごとがあったんやなかったか?」 「え? アルトくんどうしたの?」 考え込んでいたなのはがアルトに向き直る。 「ああ。それなんだがな、さくらがお前のところで1週間でいいから戦技教導してくれって言うんだ」 えっ!?となるなのはにさくらが畳み掛ける。 「お願いします!今日アルト隊長や天城さん─────僚機を守りきれなくて・・・・・・あたし、もっと強くなりたいんです!やる気はありますから、どうかお願いします!」 深々と頭を下げるさくらになのはは困った顔をした。 「え~、う~ん・・・・・・アルトくんやミシェル君には教えてもらえないの?」 「いえ、アルト隊長にもミシェル隊長にもよくしてもらっています。・・・・・・ただミシェル隊長は長距離スナイピングしか教えてくれないし、アルト隊長も主戦術が高速機動による撹乱と誘導弾との連携攻撃なので、あたしの特性に合わないんです。・・・・・・あっ、アルト隊長、全く役に立たないなんて言ってませんからね!」 あたふたしながら否定するさくらに、アルトは 「仕方ないさ。人それぞれの特性があるんだから」 と流した。 「そっか・・・・・・でも私はうちの新人達の面倒を見てあげなきゃいけないからなぁ・・・・・・さくらちゃんは何がやりたいの?」 「近・中距離での機動砲撃戦です。今日の戦いで、長距離からの援護狙撃という戦術に限界を感じたんです」 長距離からの狙撃にはどうしてもタイムラグが出てしまう。そこがスナイパーの腕の見せどころだったりするが、彼女には今が限界だった。 さくらの言った戦術はなのはの十八番とも言える戦術で、彼女が魔法を手にしてから10年間磨いてきた戦術機動だった。 「だったら1週間、なんて中途半端な期間はダメだね。さくらちゃん、3週間でも頑張れるかな?」 「はい!もちろんです!!」 さくらが嬉々として応える。なのはは頷くと、人指し指と中指を立てていわゆる〝ピース〟の動作をすると続ける。 「でも条件が2つ。まず1つ目に、アルトくんがさくらちゃんの面倒をみてあげること。わたし、魔導士としてのスキルしか教えられないから、それをバルキリー用に転換してあげないと」 アルトは仕方ないな。と肩をすくめる。 「2つ目に、どうしてもうちの新人の教導がメインになっちゃうから、教導は早朝と夕方ぐらいしかできないんだけど、それでもいい?」 「はい、構いません!お願いします!」 「うん、いい返事。明日の早朝には始めたいから、部隊に帰ったら荷物をまとめて、アルトくんと一緒においで」 「はい!ありがとうございます!」 さくらは最敬礼して言った。 これが地獄への入り口であった。 To be continue・・・・・・ ―――――――――― 次回予告 試験駐屯を名目に機動六課に派遣されるサジタリウス小隊 しかし開始されたさくらの教導はあまりに――――― 次回マクロスなのは第21話「サジタリウス小隊の出張」 『なのはさんが、あんな人だったなんて・・・・・・』 ―――――――――― シレンヤ氏 第21話へ
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「それでは、フェイトちゃんの嘱託魔導師試験合格を記念して・・・」 「乾杯!」 アースラ艦内では、本局で試験を終えたフェイトのささやかな祝賀会が開かれていた。最低限のオペレーター以外は食堂に集合し、そ の主役のフェイトはその中で恥ずかしそうにしつつ、皆に持ち上げられていた。 「あ・・・ありがとございま」 「飲めー!歌えー!騒げー!デストローイ!!!」 「ハイ、ハイ、ハイハイハイハイリンディ提督のちょっといいトコみてみたーい!!!」 「YEAAAAAAAAAAAAAAAAAAHUUUUUUUUUUUUUUUU!!!!」 ささやかと言うには騒ぎ過ぎである。この艦の理性でもあったクロノ・ハラオウンがいないと言う事はこれほどまでに混沌を呼ぶのか。 「どーしたのー?フェイトちゃんの為の宴なのに~」 「リンディ提督、いえ、その・・・うわ、酒臭」 「ぶふ~ん、リンディママに全部話して御覧なさ~い、っていうかなのはちゃんでしょ~?」 「・・・はい」 その時、通信音が響き、ヘッドセットをつけっぱなしのエイミィが出た。 「はいはい~ああ、クロノ君?」 通信に応対するエイミィのさりげない言葉に戦慄が走り、全員が一瞬で凍りつく。 「うん、今フェイトちゃんの試験終わって・・・え?組織の人と連絡取りたい?わかった・・・最寄の電話ボックスと組織の人を繋ぐから」 「組織・・・?」 フェイトがリンディに怪訝な顔をして尋ねる。リンディは少々顔を引き締める。 「ええ・・・クロノとなのはちゃんには今、捜査の依頼が来ていたからそちらに向かってもらっていたの、後数時間で定期連絡が来るだろう し、その時に一度戻ってもらうように言っておきましょうか?」 「いえ・・・大丈夫です、ですが」 フェイトは真っ直ぐにリンディを見つめ、言った。 「私の方から会いにいきます」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ネアポリス市内のケーブルカー 車掌の笛の音が響く。 「ふぇぇー!!待ってぇ!待ってください!」 ドアが閉まりきる前に間一髪滑り込んだなのは、周りの乗客の注目の的となり、軽く誤魔化し笑い。 「危なかったぁ・・・」 「もう少し待ってくれてもいいよね・・・外国の交通はしんどいよ・・・」 席を探すなのはとユーノだがその最中とんでもない人物を見つけてしまった。 「あ」 「あ」 「あ」 先程空港で自分達を騙した人物・・・ジョルノ・ジョバーナと聞いた彼がボックス席にいた。 「えと・・・座ってもいいですか?」 「え?いや、ああ、どうぞ・・・」 ジョルノと向かい合って座るなのは、荷物は通路側に置く。なのはの横の座席にユーノがちょこんと座る。 「君は・・・いや、覚えてないのか・・・?」 「さっき、空港で会った、ジョルノ・ジョバーナさんですよね?」 「・・・ああ、そうだけど・・・」 「荷物・・・無いんですか・・・」 若干落胆した顔を見せるなのは、ジョルノはそこで話を切り出す。 「その・・・さ、こう言うのは何だけど君は危機感が足りないように思えるんだ、僕が泥棒まがいの事をしていると知っているならわざわざ近寄ったりしないと思うし、荷物だって抱えて持つほうが安全じゃないか?」 「じゃあ、また盗むんですか?」 流石のジョルノも頭痛を覚えた。 「出来るなら今やってみてください」 「(なのは・・・ちょっと怒ってる・・・?)」 「(うん)」 念話での会話すら・・・いや、念話だからこそなのはの静かな怒りが伝わってきた。元よりなのはは曲がった事が嫌いであった、如何なる 理由があっても、どんな境遇であろうと、犯罪に手を染める事を許せない、頑固で真っ直ぐな性格であった。 「出来るのなら今すぐに、盗んでみてください」 「・・・なら、遠慮無く」 ジョルノは即座になのはの荷物を掴む、だが、そこまでだった。 「これは!?重い・・・!!」 出発前 「はいこれ、なのはちゃんは女の子だから色々入れなきゃいけないでしょ?盗まれたりするかもしれないし、特性のスーツケースを用意したのよ」 「なのはちゃんの魔力波動を登録すれば他の人には開けるどころか持つ事すら出来ないようにしてみたよ、開けっ放しには注意してね」 「ありがとうございます、エイミィさん、リンディさん」 「提督・・・僕には・・・」 「それじゃあいってらっしゃい」 「・・・はい・・・」 ジョルノは自分の判断が間違っていた事に気付いた。 この少女は・・・危機感が無いのではない。 危機感を持って、あえてこの場所にいるのだ・・・と 「そうか、お前がジョルノ・ジョバーナか・・・」 そんな中、唐突に話しかけてくる男がいた。ケーブルカーの上の方からゆっくりと歩いてくる、おかっぱ頭の男。 「・・・あんた、誰です?」 「あ、すみません、今ちょっと取り込み中なのでお話なら後にして・・・」 なのはの言葉が途切れる、そばで見ていたユーノは男がなのはに向かって手を突き出したのを見た。 「すまないが・・・ちょっと話したい事があってね、少し時間をもらうよ」 男がすぐに手を離した、にも拘らずなのはは口を塞がれたかの様に呻いている。 「むぐッ!?むぐう!!?」 『ジッパー』がなのはの口に縫い付けられている所為で喋れないのだ。 「ば、馬鹿な!?こんな事が・・・」 「ジョルノ・ジョバーナ、率直に聞きたい・・・このような能力を使う者を見た事は無いか?」 「この様な・・・他にも能力を持つ者がッ!!」 殴った。振り下ろすような拳がジョルノの顔を打ち抜く。 「質問はいらない、ただ答えればいい・・・ここ数日ギャングの中で腕に心得のあるやつが連続して狙われている・・・俺の仲間もその襲撃にあっている、それはどうやら特異な能力を持った奴らが、何らかの目的で集中してここ一帯を狙っている・・・という事なんだ・・・」 「・・・」 「お前が空港周辺で稼いでいるのは知っている・・・だから、妙な奴が来たなら一番お前が詳しいと思ってな・・・」 「・・・魔術士連続襲撃事件か」 「(ゆ、ユーノ君!)」 男が声の方向に向き直る、しかしフェレットであるユーノを当然無視してなのはへと。 「今のは君の声かい?オカシイ、な?口を閉じているのに喋るなんて・・・それに何やら・・・連続襲撃事件と聞こえたが気の所為かい・・・?」 「(ごめんなのは・・・!!)」 「・・・」 なのはは何も言わずじっと堪えた。男はそれを恐怖で緊張していると感じ取ったのか、少し優しい口調で 「じゃあ一つだけ答えてくれないかな・・・?俺の言ったギャングが連続して狙われている事件について、君は心当たりがある・・・イエスかノーか首を動かして答えてくれ」 イエスと応じれば、当然更なる追及を受けるだろう。 ノーと応じれば・・・解放してはくれないだろう、解放してくれたとしても背後関係を洗われる。 どちらも選べない状況で逡巡するなのは、顔に一筋流れる汗を ベロンッ! 男が舐め取った。 「!!??!?!?」 「(こいつ・・・!!)」 「・・・」 「俺ね・・・人が嘘をついてるかどうか汗の味で解るんだ・・・この味は答える事に嘘・・・つまり答える事を隠したい・・・って事」 今度はなのはの肩口から二の腕の辺りまでがジッパーで大きく開かれた。 「ムゥー!!ムグゥー!!」 なのははすっかり気が動転していた。無理も無い、こんな身の危機では成人男性ですら悲鳴を上げて逃げ出す程だ。 「もう少し、話を聞く必要があるようだな・・・俺の名はブローノ・ブチャラティ・・・あまりにだんまりが続くようなら質問を『拷問』に変える必要があるぜ・・・」 「(なのは!!目くらましと解呪をセットでぶつける!!この場は脱出だ!)」 念話の声に理性を取り戻すと同時に、閃光弾の様な光が炸裂した。 「ぐぅっ!!?」 「うああッ!!」 ジョルノとブチャラティが目を押さえて仰け反る。 解呪によって身体のジッパーが無効化した事を確認すると、脱出経路を探そうと目を走らせた刹那、なのはに見えた。 『Protection』 窓の外で鉄槌を振りかぶる少女の姿が 「おらあああぁぁぁ!!!!」 窓ガラスを突き破って来た少女の鉄槌がなのはのプロテクションに食い込み・・・ぶち破った。 衝撃でそのまま反対側の壁まで吹っ飛ばされるなのは 「っかはっ・・・」 瞬時にバリアジャケットを展開していなかったら壁に叩きつけられて気絶していただろう・・・同時にレイジングハートを展開し、対峙するなのは。 「誰なの!?」 「命はもらわねぇ・・・おとなしくやられてくれ」 to be continue・・・ 前へ 目次へ 次へ
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※(第2話としての「高町なのは」の概要はこちら 「大丈夫の前に、海鳴を放っておくほど、私は故郷捨ててないからね。それに私を指名した理由も、気にはなるから」 概要 この物語の主人公にして魔導師。地球、海鳴市出身の、元時空管理局一等空尉(大尉にあたる)。 声優は田村ゆかり。 療養を勧められていたこともあり、管理局から身を引いて、ミッドチルダで小さい喫茶店を開いていた。営業成績はそこそこの模様。 だが3月15日の20歳の誕生日に、時空管理局の次元牢、拘置所から犯罪者の大量脱獄を聞いた彼女は、 多数の犯罪者たちが海鳴に向かっているということもあり、再び戦いの場に赴くこととなった。 なお、前回海鳴に来たのは成人式の出席のため。 フェイトやアリサ、すずか、はやてとは子供の頃からの親友にあたる。 特にフェイトとはお互いを守りあう、支えあうと約束した本当の親友同士。 ヴィヴィオは彼女の娘(血のつながりはなく、彼女が引き取った)。現在は単身赴任状態なので ヴィヴィオとは電話や通信での連絡がせいぜい。 穏やかで元気印の誰にでも好かれる明るさが、周りの人間を集めていく不思議さを持つ。 以前に比べると性格が穏やかで平和主義気味にやわらかくなっている。喫茶店の営業と子育てで 自然と肩の力が抜けたらしい。 (メタなことを言うと、原点「とらいあんぐるハート3」の性格に寄っただけなのだが) また本人の自覚は薄いが、正義の心はとても熱い。 ユーノとは今だ友達以上、恋人未満の状態が続いている。が、そのことをつつかれるとあたふたすることから、本人もまんざらではないのかもしれない。 事件では海鳴を拠点として動いている。実家に戻っている状態である。 リーバルト・ダイオスはある種気になる犯罪者であるとともに、「さん」付けしている 唯一の犯罪者。 前述のとおり今回も主人公ではあるが、登場は1話の最後と遅かった。 むしろその話の主役はフェイトだったし…… + 彼女が管理局を辞めた理由 なのはが管理局を辞めた理由だが、療養自体は嘘ではないのだが、実は深い理由があった。 喫茶店を開く前から、夢で見るもの。 頻繁に見る悪夢、死人の山の中にいたり、血濡れの丘に立っていたり、声をかけたとたんにその人がいなくなったりという悲惨な状況などの夢ををしょっちゅう見るようになって、 自分が怖くなっていたのである。 第30話で洗脳されて以降、さらにそのトラウマは強くなり始めてくる。 それが因果なのか、下記の魔力の正体にもつながってくるのであるが。 + 彼女の魔力の正体 なぜ一介の地球人の彼女が、ここまで高い魔力を持っていたのか。それは彼女の前世に関係があった。 その前世とはミッドチルダにかつていた魔導師、エルリア・エムループ。 強大な魔力を持ちながらも周りから疎んじられていた人間である。 のちのキング・ハーツ首領となるディアブロ・カルソニクスの以前の名前であるセラフィム・タイロープとは恋人のような友達のような、不思議な関係が続いていたが、 「破壊と絶望」の力で本人が望まずともすべてを壊してしまう状況が続いていた。 そしてその滅ぼす力でセラフィムを捕縛、呪いをかけたのだが、その時にエルリアも砲撃魔法によって致命傷を負い、その場に倒れた。 セラフィムに、次元等から出られない呪いを残して。 そしてその口から出た言葉は…… 「……一人では、行かせない……なぜなら……私は……君が好きだから……」 愛するが故の、呪いと言う事であろうか。 + 結末は…… 魔導師が次元中から消えてしまうという現実を目の当たりにしたこと、セダンから追い打ちをかけられたことで、 ついになのはは倒れてしまう。 彼女の目を覚まさせたのは、ユーノの存在だった。 ここで、なのはとユーノはお互いに絆以上の絆、恋心ではっきりと結ばれることとなった。 それ以降の展開は、本編、ストーリー展開を参照してほしい。 + レイジングアーマー 戦闘スタイル 魔力の収束と放射が得意で、攻撃力と防御力はかなり高いものの、唯一の弱点ともいえる 機動力の弱さがあり、近接戦闘は苦手(それでも、子供の頃と比べるとだいぶ進歩している)。 ステータス 魔導師ランク AAA 攻撃力 A 防御力 A 機動力 D 魔法防御力 B 以前のSクラスからAAAクラスに魔力が減少している。 以前からの無理強いが祟ったというのが強く、回復はあまり見込めないということ。
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autolink NS/W04-006 カード名:なのは&フェイト カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:2 コスト:1 トリガー:1 パワー:6000 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《武器》? 【永】あなたのターン中、他のあなたのキャラすべてに、パワーを+X。Xはそのキャラのレベル×500に等しい。 【起】[② このカードをレストする]あなたは自分の山札を見て《魔法》?のキャラを1枚まで選んで相手に見せ、手札に加える。その山札をシャッフルする。 R:助けよう・・・・・・二人で・・・・・・きっと・・・・・・! RRR:なのは「だから、今日もちゃんと帰ってくる」 レアリティ:R RRR illust.R:ますやまけい RRR:藤枝雅 パンプと有力なサーチを併せ持つ、サポート向けカード。 黄らしい自ターンのみの強化は、青の相手ターンのみの強化と比べて能動的に生かしやすい。 後列に置いても腐らないため最後まで戦えるキャラでもある。 ただし、こちらが目的なら「飛天無双斬に耐えられる点」を除けば“ナース服”小毬のほうがコストパフォーマンスがよい。 また、レベル2であるため黄限定で組んでいない限りは位置を選ぶものの相手ターンもパンプ出来る 守護騎士シャマル&守護獣ザフィーラのようなカードの方が優秀である。 もう片方の能力では、《魔法》?キャラのサーチを行える。 コスト2とやや重いものの、起動能力なので何度でも使用可能で、《魔法》?キャラは多いので、サーチ対象にも困らない。 手札アンコールのお供や、場の維持などに一役買ってくれる。 ただし、レスト能力なので1ターンに何度もはまず使えない。 また、本人や自分への指定パンプをもつ総務統括官リンディも《魔法》?キャラであるため場を整えるにも便利。 何回もサーチしないなら、協力してくれへんかな?で十分だが、色が違うためまだ余地はあるだろう。 総務統括官リンディからの指名パンプで、驚異のパワー+2500・・・なのだが、 素パワーが6000のため1体分の恩恵を受けてやっと2/1バニラ。しかも自ターン中のみかつ指名性と中途半端だったりする。 しかし、2体分の恩恵を受けると11000という驚異的なパワーアタッカーと化す。 と、見ての通り非常に器用貧乏感の漂う一枚。 だが、特徴も回収・強化に欠かないもので構成されているため、うまく全ての能力を生かせれば緊急時のアタッカーに手札の補充にとなかなかに強力。 黄色を主体にデッキ構築するのならば、そこまで無理をせずに入れられそうである。 余談だがアニメでは出ているフェイトの袖口の白い部分がRイラストでは出ていない。 ・関連カード カード名 レベル/コスト スペック 色 備考 総務統括官リンディ 0/0 500/1/0 黄 ・関連ページ 「なのは」? 「&」? 「フェイト」? 《魔法》?
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魔法少女ニニンがなのは伝 「音速丸襲来!!」 魔法の使えるごくごく普通の小学3年生、高町なのは彼女はある日親友であるフェイトにこんな事を言った。 「ねえフェイトちゃん。召喚魔法ってした事ある?」 「召喚魔法? 知ってはいるけどしたことないな。でもどうしてそんな事を?」 「ユーノ君が知ってるって言うから、ちょっと試してみようと思ったんだけど。フェイトちゃんも一緒に手伝ってくれない?」 「面白そうだね、良いよ。でも何を召喚するの?」 「えへへー実はフェニックスを召喚してみようと思ってるんだ」 そんなこんなでなのははユーノとフェイトの助けを借りアースラで召喚魔法を行い高位の召喚獣の召喚を試みる事となった。 「リリカル、マジカル、フェニックス召喚!」 なのはとフェイトが魔力を注ぎ、円形の魔法陣に魔力が溢れ爆音と共に煙が立ちこめた。 「あれ…もしかして失敗?」 フェニックスが召喚できればそれは相当な大きさの筈なのだが立ち込める煙にはそんな影はない、代わりに妙に味のある濃い~声が響いた。 「呼ばれて飛び出てアンポンタン!! ハッスルハッスル音速丸ううううう!!!!(若本)」 「音速丸さん、あんまり叫ばないで下さいよ。音速丸さんの声でまた空間が歪んだじゃないですか」 「そうですよ音速丸さん、今アニメが良いところなんですから…あれ? なんで我々こんな所に?」 煙の中から現れたのは羽のある丸っこい黄色い物体と忍者みたいな格好の人だった。 「これは一体?…」 「この人達が召喚獣?…」 突然、丸っこい物体と忍者が現れて呆然とするなのはとフェイト。 「音速丸さん! 突然見知らぬ所に来たと思ったらツインテールの美少女が目の前に!!」 「しかも二人ともステッキらしき物を持っている様子…これはもしや魔法少女的な何かでは!?」 「落ち着けお前ら~。ここで慌てれば確実に死亡フラグ確定!! 俺がまずファーストコンタクトを試みるずらああああ!!!!(若本)」 音速丸と呼ばれた丸っこいのはフヨフヨとなのは達の所に飛んで来た。 「きゅ~んきゅ♪ きゅ~んきゅ♪(若本)」 「きゃっ この子人懐っこいよフェイトちゃん」 「それに意外と可愛いね、なのは」 音速丸は鳴き声(?)を上げながらなのはとフェイトに近づき擦り寄って顔を舐めたりしだした。 「音速丸さんがカワイイ系の動物キャラのマネして美少女にセクハラしてるぞ!!」 「ズルイっすよ音速丸さん! 俺たちにもおすそ分けしてください~」 「黙れ~い!! このクルピラ野郎共が~!! 美少女と美女は俺のモノとハムラビ法典に書いてあんだよ~~!!(若本)」 なのはとフェイトにくっつく音速丸に不満の声を上げる忍者達、その忍者達に音速丸は本性を曝け出して吼えた。 「うわっ! なんかベリーメロンっぽい声だよフェイトちゃん」 「私はどっちかって言うとアナゴ的なものを感じるな」 そして落ち着いた所で音速丸たちの自己紹介が始まった。 「初めましてお嬢さんがた~俺の名は音速丸、第108銀河大統領にして、今年度抱かれたい男ナンバー1だ。ぶるううあああああ!!!!(若本)」 「ホントですか!?」 「なのは大統領ってなにか特別なおもてなしした方が良いのかな?」 「なのはちゃんフェイトちゃんそれ嘘だから。音速丸さん純真な子供に嘘を言って混乱させないで下さい。ところで僕の名前はサスケって…」 「あ~、こいつらは忍者その1、2、3でいいからよ(若本)」 「ひどいっすよ音速丸さん! 他の奴はともかく俺は名前があるんですよ!」 「サスケさん! 声がキング・オブ・ハートだからって調子に乗ってるんじゃないですか!?」 「五月蝿いぞ雑種!」 「うわ! 逆ギレのうえ王様モード(by fate/stay night)だよ」 ヒートアップする音速丸と忍者3人になのはとフェイトは苦笑いするしかなかった、そんな所にはやて達、八神家一行がやって来て音速丸のハチャメチャのギアを上げた。 「うわっ! なんやこのハチャメチャな空気は…っていうか何で忍者さんがこんな所におるん?」 「ピコピコピーン! おっぱいレーダーに反応ありいいい!!(若本)」 音速丸はそう叫ぶと八神家一…いやアースラ一の巨乳であるシグナムに(その胸に)飛び込んだ。 「うわっ! なんだこの丸っこいのは!?」 「おっぱ~い! おっぱ~い! おっぱあああああい!!!!(若本)」 「ひゃっ! 服の中に潜り込むな!」 音速丸は“おっぱい”と連呼しながらシグナムの服の中に入ろうとその丸いボディで暴れまわる。 「音速丸さんずるいっすよ~!」 「そうです俺たちにもおっぱい分けてください!」 「馬鹿野郎がああああ!! この世のおっぱいは全て俺のものだってこの前国会で決まったろうが!! ぶるううああああ!!(若本)」 「なんかこの丸っこい子、セルみたいな声やな」 「あたしはブリタニア皇帝だと思うな」 「私はメカ沢さんの声に聞こえますよ、はやてちゃん」 シグナムにセクハラを続ける音速丸に八神家の皆は音速丸を見て各々に感想を言った、そして音速丸のセクハラはレヴァンティンの一撃で終わる事となった。 続かない。 目次へ 次へ
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第6話「決意、そしてお引越しなの」 「じゃあ、メビウスからは何も連絡は……」 「はい……ウルトラサインもテレパシーも、一切ありません。」 地球から遠く離れた宇宙に存在する、M78星雲。 その中にある、地球よりも遥かに巨大な星―――光の国は、ウルトラマン達が住まう星である。 そんなウルトラマン達の中でも、優れた戦闘能力と、そして優しさを持つ戦士達がいた。 彼等はウルトラ兄弟と呼ばれ、宇宙の平和を守る宇宙警備隊の一員として、日夜戦っている。 そのウルトラ兄弟達に、今、未曾有の事態が起きた。 ウルトラ一族にとっては最大の宿敵の一人といえる、最大の悪魔―――ヤプール人が復活を果たした。 ヤプール人とは、異次元に存在する邪悪そのもの。 自らを、暗黒から生まれた闇の化身と豪語する悪魔である。 ヤプール人はこれまで、幾度となくウルトラ一族へと戦いを挑んできた。 ウルトラ兄弟達は、その都度何度も撃退したが……ヤプールは、何度も復活を果たしてきた。 彼等はヒトの負の心を好んでマイナスエネルギーに変えてエネルギー源としているため、その存在を完全に消し去る事は不可能なのだ。 ヒトがこの世から完全に消え失せれば、もしかすると可能かもしれないのだが、そんな馬鹿な話はありえない。 一時は、封印という形で決着をつけられたかのように思えたが……その封印も、悪しき侵略者に破られてしまった。 結局ウルトラ兄弟達は、ヤプールが復活する毎に打ち倒すという手段を取るしかなかった。 そしてつい先日、彼等はヤプールが潜む異次元へと乗り込み、決戦に臨み、ヤプールに打ち勝つことができたのだが…… ここで、予想外の事態が起こった。 ヤプールを倒した影響により、異次元世界は崩壊を迎えようとしたのだが……ヤプールがここで、最後の悪足掻きを見せた。 ウルトラ兄弟の末弟―――ウルトラマンメビウスを、道連れにしていったのだ。 メビウスはヤプールと共に崩壊に巻き込まれ、そして行方不明となった。 兄弟達は、様々な手段を使ってメビウスの捜索に当たっていたのだが、メビウスの行方は全く分からないままであった。 もしもメビウスがまだ生きているとするならば、可能性は一つしかない。 「やはり、崩壊の影響でどこか別の次元に落ちてしまったのか……」 「しかし……そうだとしたら、どうやってメビウスを探せばいいんですか?」 「メビウスから何か連絡があれば、どうにかならなくもないんだが……」 メビウスは、どこか別の異世界にいる可能性が高い。 それがどこか分からないのが、問題ではあるが……それさえ分かれば、救出に向かうことはできる。 ウルトラ兄弟の中には、異なる次元・異なる世界への転移能力を持つものもいるからだ。 今現在、メビウスを救う為に、光の国の者達は一丸となって動いている。 ウルトラ兄弟の長男にして宇宙警備隊の隊長であるゾフィーは、空を仰ぎ遥か彼方―――地球を眺め、弟のことを思う。 「メビウス……一体、どこに……?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「なのは、フェイト!!」 「ユーノくん、アルフさん……」 「二人とも、もう体は大丈夫なのかい? 大分酷いダメージだったけど……」 「うん、何とか。 私はしばらく、魔法は使えないみたいだけど……」 丁度その頃であった。 時空管理局の本局にて、なのは・フェイト・ユーノ・アルフの四人が久方ぶりの再会を果たしていた。 こうして直接顔を合わせるのは、彼等が出会う切欠となったPT事件以来である。 しかし、彼等の表情には喜び半分不安半分という所である。 その原因は、大きく分けて二つ。 一つ目は、言うまでもなくヴォルケンリッター達の存在にある。 そしてもう一つは、なのはとフェイトが受けたダメージの大きさにあった。 なのはは、自分でも攻撃を受けた時点で予想はしていたが……魔力の源であるリンカーコアが、異常なまでに縮小していた。 魔力を吸い取られてしまい、回復するまでの間、一時的に魔法を使えない状態にあったのだ。 フェイトも、なのは程ではないとはいえ、それなりのダメージを受けていた。 しかし何より……二人とも、自分のデバイスに大幅な破損を受けてしまっていたのが大きかった。 レイジングハートもバルディッシュも、再起不能な状況にまで追い込まれてしまっていたのだ。 自己修復作用だけでは間に合わないため、現在パーツの再交換作業の真っ只中にあった。 「レイジングハート……」 「ごめんね、バルディッシュ……私の力不足で……」 「……こういう言い方は何だが、これは二人のミスじゃないよ。」 「クロノ、エイミィ、リンディ提督……それに……」 「ミライさん……」 落ち込むなのは達へと、部屋に入ってきたクロノが声をかけた。 その傍らには、彼の相棒であるエイミィと、アースラ艦長のリンディ。 そして……ミライがいた。 クロノは、自分達が相手をしていた敵の魔法体系―――ベルカ式について、簡潔に説明を始めた。 今回なのは達が敗北したのは、彼女達の魔法体系―――ミッドチルダ式との相性の悪さが大きかった。 ベルカ式とはその昔、ミッド式と魔法勢力を二分した魔法体系。 遠距離や広範囲攻撃をある程度度外視して、対人戦闘に特化した術式である。 ミッドチルダ式と違い、一対一における戦いを念頭に置いてあるものなのだ。 そしてその最大の特徴は、デバイスに組み込まれたカートリッジシステムと呼ばれる武装。 なのは達もその目でしかと見た、ヴォルケンリッター達が使っていたシステム。 儀式で圧縮した魔力を込めた弾丸をデバイスに組み込んで、瞬間的に爆発的な破壊力を得る。 術者とデバイスに負担はかかるものの、かなりの戦闘能力を得られる代物である。 「随分、物騒な代物なんだね……」 「ああ……多くの時限世界に普及している魔術の殆どは、ミッド式だからね。 御蔭で、解析に少しばかり時間を取られてしまったよ……」 「そうだったんだ……」 ベルカ式に関しての説明が終わり、皆は少しばかり考えた。 自分達の使っている魔法が、魔法の全てではない。 これから先、自分達の前に立ちふさがるのは、まだ見ぬ未知なる強敵。 かつてのPT事件と同様か、それともそれ以上の戦いになるかもしれない。 誰もが息を呑むが……その直後であった。 皆が、ベルカ式よりも最も疑問に思わねばならぬ事に気づいた。 戦闘の最中、突如として謎の変身を遂げたミライ―――ウルトラマンメビウスについてである。 当然ながら、視線はミライに集中することになる。 ミライも、ここで隠し事をするつもりはなかった。 丁度いい具合にメンバーも揃っている……ミライは、全ての事情を話し始めた。 「リンディさん達には、先にある程度の説明はさせてもらったけど、改めて全部話すよ。 僕の事……ウルトラマンの事について。」 ミライは、隠していた事情も含めた全てを話した。 自分は宇宙警備隊の一人であり、そしてウルトラ兄弟の一人である、ウルトラマンメビウスである事。 異次元に潜む悪魔―――ヤプールとの戦いの末に、次元の狭間に呑まれた事。 そして気がついたら、アースラに救助されていた事。 自分の正体を明かせば、周囲の者達にも危険が及ぶと判断し、正体を隠していた事。 先に説明を受けていたリンディ・クロノ・エイミィの三人は、二度目となるため流石に驚いてはいなかった。 一方なのは達四人はというと、当然ながら驚き、そして呆然としている。 別世界の人間というだけならば、まだ分かるが……その正体が宇宙人ときては、少々許容の範囲外であった。 そして、ウルトラマンという存在についてにも驚かされた。 宇宙警備隊という、時空管理局に匹敵するほどの大組織の一員として、ミライ達は動いている。 彼は、その中でも特に秀でた戦士であるウルトラ兄弟の一人―――中には、メビウスよりも強いウルトラマンはいるという。 早い話……ミライがとんでもない大物であった事に、皆驚いているのだ。 「えっと……一つだけ、質問してもいいですか?」 「いいけど、何かな?」 「話を聞いてて、少しだけ不思議だったんですけど……ウルトラマンは、どうして地球を守るんですか? 守らなくてもいいとかそういう話じゃなくて、色んな星がある中で、どうして地球を選んだんだって……」 なのはには、ミライの話の中で一つだけ、腑に落ちない点があった。 ウルトラ兄弟達になる為には、地球防衛の任に就く必要があるという。 そうして多くの事を学び、ウルトラ兄弟になるに相応しいまでの成長を遂げるというのだが…… 何故、彼等が防衛する星が地球なのか。 話を聞く限りでは他にも多くの星はある筈なのに、何故態々地球を選んだのか。 そんな彼女の疑問を聞くと、ミライは少しばかり瞳を閉じた後、ゆっくりと口を開いた。 かつて、共に戦った大切な親友からも同じ質問をされた。 その時の事を思い出しながら……ミライは、なのはに答えた。 「僕達ウルトラマンも、元々はウルトラマンの力を持っていなかった。 皆と同じ……地球の人達と全く同じ、普通の人間だったんだ。」 「え……?」 「ある事故が切欠で、僕達はウルトラマンの力を手に入れた。 ……僕達は、地球の人達に自分達を重ねているんだ。 もう戻る事のできなくなった、あの頃の姿を……」 「だから、地球を……」 ウルトラマンが地球を守る理由。 それは、かつての自分達の姿を重ねているからであった。 更に、地球は多くの侵略者達から、特に狙われている星でもある。 だからウルトラマン達は、地球を守ろうと決めたのだ。 そうして人間達を守る戦いを続けていく内に、ウルトラマンとして何が大切なのかを知る事ができる。 それこそが、彼等の戦う理由であった。 だが、メビウスには……いや、これは全てのウルトラマンの思いだろう。 もっと重要な、戦う理由があった。 「それに……」 「それに?」 「僕達は、人間が好きですから。」 「……なるほど、ね。」 「勿論、人間だけじゃなくて……大切なもの全てを、守りたいと思っています。 困っている人がいるなら、その人を助けるためにウルトラマンの力はある。 僕はそう信じてます……だから、決めました。」 「え……決めたって?」 「ミライ君は、元の世界に戻る手立てがつくまでの間、私達に協力してくれるって言ってくれたんだ。」 ミライは、今回の事件に関して全面的に協力すると、リンディへと話を通していたのだ。 自分達を助けてくれた時空管理局の者達に、恩返しがしたいからと。 それに、もう一人のウルトラマン―――ダイナの事が気がかりであるからと。 前者だけでもミライにとっては十分な理由であり、加えて後者のそれもある。 ここで引き下がれというのが無理な話だ。 保護した民間人に戦闘をさせるというのは流石に気が引けたのか、最初のうちはリンディも遠慮していた。 しかし……ミライの積極的な申し出に、彼女も折れたのだ。 最も、局員ではないなのは、フェイト、ユーノ、アルフの四人が協力している時点で、今更な感はあるのだが…… メビウスの力は、確かに今後の戦いを考えると必要不可欠だろう。 闇の書側についているとされる謎のウルトラマンとの戦いには、最も彼が向いている。 なのはやフェイト達どころか、下手をすればアースラ最強の戦闘要員であるクロノさえも危ない程の強敵なのだから。 「さて……それじゃあ、フェイト。 そろそろ面接の時間だが……なのは、ミライさん。 二人も、僕に同行を願えないか?」 「……?」 「面接……うん、いいけど……」 なのはとミライの二人は、面接という言葉の意味がいまいちよく分かっていなかった。 聞く限りじゃフェイトの用事らしいのだが、それにどう自分達が関係するのだろうか。 不思議そうに、二人は顔を見合わせる。 そんな様子を見たクロノは、難しく考える必要はないと言い、部屋を出て行った。 三人は、彼の後についていく。 「エイミィ、面接って?」 「うん、フェイトちゃんの保護観察の事についてだよ。 保護観察官のグレアム提督と、まあちょっとしたお話。 なのはちゃんはフェイトちゃんの友人って事で呼ばれたんだと思うけど…… ミライ君は、まあ色々と大変な事情が重なってるからね。 多分、そこら辺の事に関してじゃないかな?」 「へぇ~……」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「クロノ、久しぶりだな。」 「ご無沙汰しています、グレアム提督。」 そしてその頃。 クロノの案内によって、時空管理局顧問官―――ギル=グレアム提督の部屋に三人はついていた。 三人は椅子に座り、グレアムの言葉を待つ。 何処となく緊張している様子の彼等を見て、グレアムは少しばかり苦笑した。 その後、本題に入るべく、手元の資料を見ながら三人へと話しかける。 「フェイト君、だったね。 保護観察官といっても、まあ形だけだよ。 大した事を話すわけじゃないから、安心していい。 リンディ提督から、先の事件や、君の人柄についても聞かされたしね……君は、とても優しい子だと。」 「……ありがとうございます。」 「さて、次は……んん? へぇ……なのは君は日本人なんだな。 懐かしいなぁ、日本の風景は……」 「……ふぇ?」 「はは……実はね、私は君と同じ世界の出身なんだ。 私はイギリス人だ。」 「ええ!!そうなんですか?!」 「あの世界の人間の殆どは、魔力を持たない。 けれど希にいるんだよ、君や私のように、高い魔力資質を持つ者が。」 まさか時空管理局に、自分と同じ世界の出身人物がいるとは、思ってもみなかった。 驚き思わずなのはは声を上げてしまう。 するとそんな様子を見たグレアムは、彼女が予想通りのリアクションをしてくれたのを見て、静かに微笑んだ。 その後、彼は己の身の上話を話し始めた。 「おやおや……魔法との出会い方まで、私とそっくりだ。 私は、助けたのは管理局の局員だったんだがね。 それを機に、こうして時空管理局の職務についたわけだが……もう、50年以上前の話だよ。」 「へぇ~……」 「フェイト君、君はなのは君の友達なんだね?」 「はい。」 「約束して欲しいことはひとつだけだ。 友達や自分を信頼してくれる人のことは、決して裏切ってはいけない。 それが出来るなら、私は君の行動について、何も制限しないことを約束するよ……できるかね?」 「はい、必ず……!!」 「うん……いい返事だ。」 フェイトの力強い返答を聞き、グレアムは安堵の笑みを浮かべた。 その瞳に、一切の迷いはない。 友達の為、大切な人の為に活動できる、強い意志が感じられる……この子はきっと大丈夫だ。 これで、片付けるべき最初の問題は片付けた。 残るは……来訪者、ウルトラマンについて。 「ミライ君だったね……君の話をリンディ提督達から聞かされた時は、本当に驚いたよ。 魔法の力も、君からしたら十分非常識ではあるのだろうが……今の私は、それと同じ気分だね。」 「確かに……僕も最初に皆さんの話を聞いた時は、少し驚きましたよ。」 「はは……君もクロノに呼んでもらったのは、君がいた世界に関してなんだ。 君がいた世界の捜索なんだが、実は私の担当になりそうなんでね。 事情とかは既に聞いているから、改めて君から聞く必要はないが……そういう訳で、挨拶をしておきたかったんだ。」 「そうだったんですか……グレアムさん、よろしくお願いします!!」 「こちらこそ、よろしくだよ。 それで、君の能力に関してなんだが……仲間の人達と連絡を取る手段はないのかな?」 「テレパシーは試してみたんですけど、通じませんでした。 一応、他にももう一つだけ方法があるにはあるのですが……それは、地球に着き次第試してみたいと思います。 ウルトラマンに変身した状態じゃないと、使える力じゃないですからね。」 「うん、分かった。 それと、もう一つ質問するが……気になる事があってね。 君が一戦交えた、あのもう一人のウルトラマンについてなんだが……分かる事は何かないかな? どんな些細な事でもいいから、教えて欲しいんだ。 捜索の鍵になるかもしれないからね。」 「はい……けど、残念な事にはなるんですけど……」 「残念な事……?」 「僕とあのウルトラマン……ダイナとは、初対面なんです。 だから、お互いの事は何も分からないんです。」 「初対面……? ミライさんも会ったことがないウルトラマンさんなの?」 「うん……」 ミライとて、全てのウルトラマンを把握しているわけではない。 実際問題、かつて地上に降り立ったハンターナイトツルギ―――ウルトラマンヒカリの事は知らないでいた。 それに、光の国以外にもウルトラマンは存在している。 獅子座L77星生まれであるウルトラマンレオとアストラがその筆頭である。 この二人のみならず、ジョーニアス、ゼアス……彼等の様な他星の者達も含めれば、数は相当なものになる。 いや、そもそも……それ以前にあのウルトラマンは、自分がいた世界のウルトラマンなのだろうか。 なのは達の世界にウルトラマンが存在していない以上、ダイナは必然的に別世界のウルトラマンということになる。 問題は、その別世界がはたして自分のいた世界と同じなのかどうかという事である。 異次元世界での戦いにおいて、次元の裂け目に落ちたのは自分とヤプールだけだった。 まさかダイナがヤプールな訳がないし、そもそもヤプールがあのダメージで生きているとは思えない。 そうなると……ダイナは、もしかしたら別の世界のウルトラマンなのかもしれない。 自分と同じで、何らかの方法でこの世界に来たウルトラマンなのかもしれないのだ。 これに関しては、本人から聞き出す以外……知る方法はないだろう。 「ただ、戦ってみて分かったんですが……ダイナからは、邪悪な意思は感じられなかったんです。」 「邪悪な意思が……?」 「僕は今までに二回、同じウルトラマン同士でのぶつかり合いを経験した事があります。 その内の一人は、憎しみに捕らわれた可哀想な人でしたが……あの人から感じたような、憎悪とかはないんです。 寧ろダイナは、レオ兄さんの様な……強い信念を持っているように感じられました。」 ミライが、ダイナとの戦いで感じた事。 それは、彼から邪気が感じられないという事実であった。 かつて彼は、ハンターナイトツルギとウルトラマンレオと、二人のウルトラマンと対峙した経験があった。 ツルギとのそれは、対決にまでは至らなかったものの、ミライにとっては忘れられない記憶であった。 目的の為ならば手段を選ばず、ただ復讐の為に力を振るうツルギから感じられたのは、圧倒的な憎悪だった。 ダイナからは、そんな憎悪の様な感情は一切感じられなかった。 寧ろ、ウルトラマンレオの持つ強い正義感に近いものが彼にはあったのだ。 レオがミライに戦いを挑んだのは、敵に破れたミライを鍛えなおす為であった。 強敵を打ち倒す為のヒントを、彼は戦いの中でミライへと授けたのである。 あの行動は、紛れもなく正義を貫く為のもの。 大切な故郷である地球を守り抜きたいという、強い想いによるものであった。 ダイナには、それがあった。 「そうか……クロノ、今回の事件に関しては……」 「はい、もう、お聞き及びかもしれませんが…… 先ほど、自分達がロストロギア闇の書の、捜索・捜査担当に決定しました。」 「分かった……ミライ君。 君はあのウルトラマンとは、この先間違いなく対峙することになる。 その時、君は彼を止められるかな?」 「……絶対とは言い切れません。 ですが、ダイナは話が通じない相手ではないような気がします。 だから何とかして彼の目的を聞き、それが悪いことでないのならば、僕は彼を助けたいと思います。 避けられる戦いは、避けたいですから。 でも、もしも彼に邪な目的があるなら、そうでなくとも彼が立ちはだかる道を選ぶなら……僕はダイナと戦います。 皆を守るために、ダイナを何としても止めてみせます。」 「そうか……いい目をしているね。 君ならば、きっと大丈夫だろう……分かった。 あのウルトラマンダイナに関しては、君が一番頼りになるだろう。 クロノ達と助け合って、最善の道を歩めるよう頑張ってくれ。」 「はい!!」 「私から、君達に話すことは以上だ。 ……クロノ、私の義理では無いかもしれんが、無理はするなよ。」 「大丈夫です……急事にこそ冷静さが最大の友。 提督の教えどおりです。」 「そうだな……」 「では、失礼します。」 四人はグレアムに一礼した後、退室していった。 理解のある人で、本当によかった。 ミライ達は、心からそう思っていた。 彼の心に答える為にもと、三人は精一杯の努力をする決意を固めるのだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「はやてちゃん、お風呂の支度できましたよ。 ヴィータちゃんも、一緒に入っちゃいなさいね。」 「は~い。」 同時刻、海鳴市。 八神家では、何てことない平和な日常の光景が見られた。 風呂が沸いた為、はやてとヴィータ、シャマルが三人で風呂場へと向かう。 シグナムはソファーに座って新聞を読み、ザフィーラは横になって寛いでいる。 そしてアスカはというと、テレビでやってるクイズ番組に夢中になっていた。 『ヘキサゴン!!』 『主にオーストラリアに分布する、その葉がコアラの主食として知られるフトモモ科の植物は何でしょう?』 ピンポンッ!! 『はい、つるの押した。』 『よしきたぁっ……笹ッ!!』 ブーッ!! 『え、何でだよ!?』 『……あのなぁ、つるの!! それコアラじゃなくてパンダやんけ!!』 「やっべ……俺も同じ事考えちまってたよ。」 「おいおいおい……」 「はは……シグナムは、お風呂どうします?」 「私は今夜はいい……明日の朝にするよ。」 「へぇ、お風呂好きが珍しいじゃん……」 「たまにはそういう日もあるさ。」 「ほんなら、お先に~」 三人が風呂場へと入っていく。 その後、ザフィーラはシグナムへと振り返った。 彼女が何故風呂に入るのを拒んだのか、何となく理由が分かっていたからだ。 アスカも二人の様子を感じ取り、振り返る。 「今日の戦闘か?」 「聡いな……その通りだ。」 「もしかしてシグナムさん、どっか怪我を?」 シグナムは少しばかり衣服を捲り上げ、二人に下腹部を見せた。 その行動にアスカは一瞬顔を赤らめ、反対方向へと向いてしまう。 しかし、見たのが一瞬であったとはいえ、十分に確認する事は出来た。 彼女には確かに、黒い傷跡があったのだ。 それは、フェイトとの戦いによって着けられたものであった。 「お前の鎧を撃ち抜いたか……」 「澄んだ太刀筋だった……良い師に学んだのだろうな。 武器の差が無ければ、少々苦戦したかもしれん。」 「でも……きっと、大丈夫っすよ。 今日初めて戦ってるところは見たけど……シグナムさん、結構強そうに見えたし。」 「ふふ……それはありがたいな。 そういうお前こそ……互角の戦いぶりだったな。」 「はい……ウルトラマンメビウス。 あいつとは、また戦うことになるだろうけど……負けません。 次は、必ず……!!」 「ああ……我ら、ヴォルケンリッター。 騎士の誇りに賭けて……」 『おい……お前、アホやろ。』 「あ、つるの抜けた。 よかったぁ、ビリじゃなくて……何か俺、こいつに親近感感じるんだよなぁ。」 「……ビリとビリの一歩手前とじゃ、五十歩百歩じゃないか?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「親子って……リンディさんとフェイトちゃんが?」 「そう、まだ本決まりじゃないんだけどね。 養子縁組の話をしてるんだって……プレシア事件でフェイトちゃん天涯孤独になっちゃったし。 艦長の方から、「うちの子になる?」って。 フェイトちゃんもプレシアのこととかいろいろあるし……今は気持ちの整理がつくのを待ってる状態だね。」 場所は時空管理局本局へと戻る。 なのははエイミィから、フェイトがリンディから養子縁組の話を受けたことを聞かされた。 この話は、とてもいいことだとなのはは感じていた。 無論、フェイトの気持ちの整理などもあるから、まだ先の話にはなるのだろうが…… 彼女達が親子となるならば、きっと上手くいくに違いないとなのはは思っていた。 そしてそれは、エイミィやクロノ達にとっても同様である。 (親子、か……) 二人の話を聞いていたミライは、昔の事を思い出していた。 自分も以前に一度、養子にして欲しいといってある人物を訪ねた経験があった。 相手は、今のこの姿―――ヒビノミライとしての姿のモデルとなった人物の、父親である。 彼はミライと暮らすことは出来ないと、その申し出を拒否した。 しかし……ミライが進むべき道を、はっきりと示してくれた。 彼の協力がなければ、今の自分はなかった……そう思うと、やはり感謝すべきだろう。 「さて……皆、揃っているわね。」 噂をすればなんとやら。 丁度、フェイトとリンディの二人が部屋へとやってきた。 それを合図に、騒がしかった室内が一気に静かになる。 今この部屋には、アースラクルーの者達が勢揃いしていた。 今回の事件に関しての説明が、これから行われるのである。 「さて、私たちアースラスタッフは今回、ロストロギア・闇の書の捜索、および魔導師襲撃事件の捜査を担当することになりました。 ただ、肝心のアースラがしばらく使えない都合上、事件発生地の近隣に臨時作戦本部を置くことになります。 分轄は観測スタッフのアレックスとランディ。」 「はい!!」 「ギャレットをリーダーとした、捜査スタッフ一同。」 「はい!!」 「司令部は私とクロノ執務官、エイミィ執務官補佐、フェイトさん、ミライさん、以上4組に別れて駐屯します。」 各々の役割分担について、リンディが説明し始めた。 地上におかれる司令部には、リンディ達五人が駐屯する事になる。 そして、その肝心の司令部の場所はというと…… 「ちなみに司令部は……なのはさんの保護をかねて、なのはさんのおうちのすぐ近所になりまーす♪」 「えっ……!!」 「……やったぁっ!!」 なのはとフェイトは顔を見合わせ、満面の笑みを浮かべた。 その様子を見て、アースラクルー皆も笑顔を浮かべる。 今回の事件は、なのは達の世界が中心だからそこに司令部を置くのは当然のことではあるものの。 中々、リンディも粋な計らいをしてくれたものである。 早速引越しの準備ということで、皆が動き始めた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「うわぁ……すっごい近所だぁ!!」 「ほんと?」 「うん、ほらあそこ!!」 翌日。 なのは達は、司令部―――高町家から凄く近い位置にあるマンションにて、引越し作業の最中であった。 なのはとフェイトの二人はベランダから、外の風景を眺めている。 ミライはエイミィやクロノ達と一緒に、荷物の運び込みをしていた。 するとエイミィは、ある事に気付いた。 ユーノとアルフの姿が、人間ではない……動物形態へと変化していたのだ。 「へぇ~、ユーノ君とアルフはこっちではその姿か。」 「新形態、子犬フォーム!!」 「なのはやフェイトの友達の前では、こっちの姿でないと……」 ユーノはフォレットへと、アルフは子犬へとその姿を変えていた。 二人とも、正体を隠しておかなければならない事情があるために、動物形態を取っていたのである。 そこへとミライもやってきたわけだが……そんな二人の姿を、彼はじっと見つめていた。 「ミライさん、何か……?」 「いや……今凄く、二人に親近感が沸いちゃったから。 正体を隠す為に変身する……分かるよ、その気持ち。」 「あ~……そういえば、似たような身の上だったわよね、あたし達。」 「わぁ~!! ユーノ君、フェレットモードひさしぶり~!!」 「アルフも、ちっちゃい……」 「あはは……」 なのははユーノを、フェイトはアルフを抱きかかえた。 するとそんな時、クロノから二人の友達が来たと言われ、二人は玄関へと走っていった。 リンディも折角だからと、一緒についていく。 その後、なのは達はフェイトの歓迎会の為に、リンディは挨拶の為に、翠屋へと向かっていった。 「早速仲良しですね、フェイトちゃん達。」 「前々から、ビデオメールとかはやってたからね。 初対面って言うのとはちょっと違うし……あれ?」 「エイミィさん、どうしたんですか?」 「あはは……艦長ったら、忘れ物しちゃってるよ。 これ、フェイトちゃん達に見せてあげなきゃ……ミライ君、折角だし届けてもらっていいかな?」 「はい、いいですけど……これって?」 「フェイトちゃんにとっての、最高のプレゼントだよ。」 ミライはエイミィからある小包を受け取った。 その中身が何なのか、それを聞くとミライも笑みを浮かべた。 きっとフェイトは、喜んでくれるに違いないだろう。 駆け足で、ミライはフェイト達を追いかけていった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ユーノ君、久しぶり~♪」 「キュ~」 「う~ん……あんたのこと、どっかで見た覚えがあるような……」 「ク~……」 「にゃはは♪」 翠屋の前のオープン席で、なのはとフェイト達は、友人のアリサ=バニングスと月村すずかの二人と過ごしていた。 ユーノとアルフも混じって、楽しげに四人は会話をしていた。 すると、そんな最中だった。 なのはは、小包を持ってこちらに近づいてくる人物―――ミライの存在に気付いた。 「あれ……ミライさん?」 「あ、いたいた。 フェイトちゃん、これリンディさんからの贈り物だよ。」 「え、私に……?」 「なのは、この人は?」 「初めまして、僕はヒビノミライって言うんだ。 お仕事の都合で、しばらくの間フェイトちゃんの家でお世話になってるんだ。」 「へぇ、そうなんですか……」 「ミライさん、これって?」 「開けてごらん。」 ミライに促され、フェイトは小包を開けた。 すると、その中にあったのは、最高のプレゼントであった。 なのは達三人が通っている、聖祥小学校の制服であった。 これが意味する事は、一つしかない……彼女達は、たまらず声を上げた。 その後、フェイトは店内でなのはの両親へと挨拶をしているリンディの元へと走っていった。 なのは達三人も、その後に続く……その後姿を、ミライはしっかりと見守っていた。 (……世界が違っても、やっぱり同じだ。 僕は、あんな笑顔を守りたい……兄さん達には少し悪いけど。 問題が片付いて、元の世界に戻れるようになるまで……精一杯、頑張ろう。 皆と一緒に……!!) 戻る 目次へ 次へ
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「いらっしゃいませ。ようこそ―――っ!?」 ホテル<アグスタ>の受付に差し出された招待状代わりの身分証明書を眼にした瞬間、男の営業スマイルは崩れ去った。 今日、このホテルで行われるオークションには各界の著名な資産家達が参加しているが、それらとはまた別の方面に名高い人物が目の前に現れたのだ。 畏怖すら含む視線を持ち上げれば、見た目麗しい三人の美少女が佇んでいる。 「こんにちわ、機動六課です」 なのは、フェイトと共に煌びやかなパーティードレスで完全武装。 プライベートでは女を捨てている我らが部隊長は、清楚な令嬢へと変身を遂げて、完璧な笑顔を作って見せたのだった。 機動六課。今回の任務は、このオークションの護衛である―――。 受付から少し離れたロビーの一角で、はやて達三人の隊長陣は一般参加者を装いながら会話を交わしていた。 「それじゃあ、オークションが始まるまでの間に営業済ませとこか」 「うん? 建物の下調べのことだよね」 はやての妙な物言いに、少々戸惑いながらもなのはが合わせた。 しかし、その返答にはやてはチッチッチッと指を振る。 「それもあるけど、メインは文字通りの<営業>やな」 「え、他に何かあるの?」 「この場にはあらゆる界隈の資産家が集まっとるんやで? しっかり愛想振り撒いて、各々のアイドル性をアピールして来ぃ! 接待営業や!」 「「ぇえ゛っ!?」」 サムズアップして衝撃の事実を告げた部隊長に対し、二人の隊長は顔を引き攣らせた。 なんという無茶な命令。なのはとフェイトの心境は、不落の要塞の攻略命令を下された少数部隊の指揮官に等しい。 「は、はやてちゃん……それ本気?」 「機動六課が実験部隊なのは十分理解しとるやろ? 色々目ぇ付けられとるし、まだまだ立場も安定せん。こういった場所で、有力な権力者に覚えを良くとしといて損はないよ」 「でも、そんなのどうすればいいか……」 「深く考えんでええよ、フェイトちゃん。普段通り、無自覚なセックスアピールで成金中年の視線を惹き付ければええんや」 「ナニいい笑顔で酷いこと言っちゃってるのはやてちゃん!?」 「無自覚……アピール……」 予想もしない親友の発言を受けて、ショックで放心するフェイトの代わりになのはが食って掛かる。 「確かにフェイトちゃんは子供の頃から露出癖があったけど、最近はソニックフォームも自重してるし、バリアジャケットのデザインも落ちついてるんだよ!? もう弾けてはいられない歳なんだよ!」 「露出癖……弾け……」 「いや、でももう染み付いたM属性は変えられんやろ? 実は局員の極秘アンケートで、人気ナンバー1なんやで。性的な意味で」 「えむ……性的……」 二人の親友が抱いていた自分へのイメージが次々と明かされ、どんどん精神的なドツボに落ちていくフェイト。 なのはが我に返って自分の発言を省みる頃には、仲良し三人組の中でも何かとワリを食うことが多い彼女はかつての暗黒時代を髣髴とさせる虚ろな表情を浮かべて何かブツブツ呟いていた。 慌ててフォローするなのはを無視して、はやてはあくまで世知辛い会話を進めていく。 「まず第一にスマイル。適当な相手見つけたら、軽く挨拶だけでもしとくんやで? ターゲットは夫婦連れ以外がええな。私らの顔はメディアで割れとるんやから、機動六課やってことを隠す必要はない。むしろガンガンアピールしとくんや!」 「まるでキャバクラだよ、はやてちゃん……」 「まあ、それに近いな。折角こんな肩丸出しの派手なドレス用意したんやから、有効に使うように」 「<何>を?」 「胸とか尻を。少しくらいセクハラされても騒いだらあかんで?」 「……ううっ、これも隊長の務めなんだね。スバルやティアナ達に、こんな辛い役割押し付けるわけにはいかないもんね」 涙を呑んで耐え忍びながら、なのはは大人の厳しさを受け入れていた。 華やかな魔法少女の活躍の裏側で展開されるドラマ。それがここにはある。 葛藤するなのはの肩を、虚ろな眼をしたフェイトが励ますように叩いた。 「なのは、耐えよう? 私も結構セクハラはされてきたけど、我慢出来たよ」 「って、フェイトちゃん本当にセクハラされてたの!?」 「二度目の執務官試験に落ちた時、試験官の人にホテルに誘われた時は本気でヤバイと思ったよ……フフッ」 「クソ! なんて時代だ……っ!」 「ごめん、フェイトちゃん。さっきの発言は迂闊やった。そんな管理局の裏話があったとは思わんかったわ」 そして、フェイトのダークサイドは意外と深かった。 なのははもちろん、はやてすらも大人としての汚れた階段を昇って成長した瞬間だった。 ―――やがてフェイトも普段の調子を取り戻し、ホテルに配置した副隊長達や新人達への指示を話し合う真面目な会話が続き、そして終わる頃。 「い、いらっしゃいませっ!!」 明らかに音量と緊張感を増した受付の声が、異様なほど広くロビーに響き渡った。 その声にはやて達が視線を移せば、受付の男はもとより、周囲の従業員が総立ちで整列して頭を下げている。 そして、そんな彼らの奇行に対しても、周囲のオークション参加客達は騒ぐこともせず、ただ息を呑んで沈黙するだけだった。 萎縮するような静寂と緊張の中心に立つ一人の男を、はやて達三人は捉える。 「本日は、当ホテルにお越しいただき、まことに……」 震えを隠せぬ声を必死に搾り出す従業員を、いっそ憐れに思えるほど全く気にも留めず、その男は受付を素通りした。 その後に付き従うように、二人の護衛が続く。いずれも女だった。 「あれは……」 「参加者の中でも一番の大物やね。今回のオークションでは、高価な私物も幾つか出品してるとか」 身に纏った純白のスーツと肩に引っ掛けるようにした羽織ったコート。いずれも惜しみなく金をかけた高級品だったが、それらはあくまで男を飾る物でしかない。 周囲の人間を萎縮させているものは彼の持つ権威であり、スーツを押し上げる屈強な肉体とその全身から立ち昇る圧倒的な<強者の威厳>であった。 「<アリウス>―――大企業ウロボロス社の経営者であり、管理局認可の単独魔導師でもある男や」 あらゆる意味での<力>を備えた、凶相とも言えるアリウスの顔を見据え、自然と強張った表情ではやては呟いた。 紛れも無い重要人物であり、このホテルの人間全ての護衛を任とする機動六課にとっても留意すべき人物である。 しかしその雰囲気や、周囲の人間を気にも留めていない不遜な態度も含めて、三人の彼への印象は共通して厳しいものとなっていた。 ロビーを横切るように歩みを進めるアリウスは、自然と三人の横をすれ違う形になる。 そこでようやく、前を見据えていた彼の視線が動いた。 「―――ほう」 アリウスの視線が捉えたのはフェイトだった。 しかし、それは決して友好的なものではない。 浮かべたのは文字通りの冷笑。向ける視線の意味は僅かな興味であり、同時にそれは人間に向けるようなものではなく、まるで珍しい動物に向けるそれであった。 「……何か?」 警戒と共に身構えたくなるような気分で、フェイトは硬い声を絞り出した。 「貴様は、<テスタロッサ>か」 「そう、ですが」 アリウスが何故<フェイト>でも<ハラオウン>でもなく、<テスタロッサ>というミドルネームを呼んだのか、三人にはその真意が分からなかった。 ただ、嘲るような口調は確実に悪意を孕んでいる。 「そうか、お前『も』か。初めて見たな。興味深い」 「……何の話でしょうか?」 「なぁに、少々気になったのだよ」 訝しげなフェイトの表情を楽しむように鑑賞しながら、アリウスは懐から葉巻を取り出した。 風紀の類が徹底管理されているミッドチルダではあまり見ない嗜好品の類だ。 それらの仕草が一連の流れであるように、背後に就いた護衛の一人が動いて、淀み無く火を付ける。ライターではなく指先から生み出した火種によって。 魔法だ。 三人の眼には、その何でもない魔法がやけに印象強く残った。 その服装から背格好まで全く同じで、顔の半分をやはり同じデザインの奇怪な仮面で隠した二人の護衛の異様さと共に。 「―――君と私の部下、どちらの<性能>が上なのかと思ってね」 背後の護衛二人からフェイトへ、意味ありげに視線を往復させてアリウスは愉快そうに呟いた。 結局、その真意を問い質す前に、物言いに不快感を露わにする三人を無視してアリウスはオークションの会場へと歩き去っていった。 「なんというか……あの人、わたしは少し苦手かな」 「素直に腹立つって言ってええよ。フェイトちゃん、大丈夫?」 「うん、気にしてないよ」 案じるはやてに対してフェイトは笑って答えて見せたが、好色な視線とは違うアリウスの瞳を思い出して、僅かに背筋が震えた。 あの男は、自分を―――。 「大物には違いないんやけどな、黒い噂も絶えん人物や。管理局でも、一度違法魔導師として逮捕命令が下ったことがあるそうやし……結局、誤認やったらしいけど」 「そんな地位の相手に逮捕段階まで行っておいて、誤認で終わったの?」 「少なくとも事件の記録は、証拠不十分と実際に動いた部隊の先走りで終結しとる」 「……変に勘繰りたくはないけど」 「やっぱり、裏で色々動いとるやろうなぁ」 金とか権力とか―――。 はやては言葉の後半を自重して飲み込んだ。どれほど黒に近くとも、実際に口にしていい相手ではない。 「まあ、いずれにせよ私らには色んな意味で遠い人物や。注意だけ払って、下手に近づかん方がええよ」 「そうだね」 資産家には色々な種類の人間がいる。それを理解する程度には、なのはもはやても社会での経験は積んできた。 不快感を義務感で押し留め、はやてとなのはは振り切るようにアリウスが去って行った方向から背を向けた。 ただ一人、フェイトだけがもう見えなくなったアリウスと二人の護衛の後ろ姿を見据え続けていた。 「気のせい、かな?」 なのはとはやてにも聞こえない小さな呟きは、僅かな疑念を含み。 本当に気のせいだったのだろうか。 あの時、アリウスと二人の護衛が自分の前を横切った時―――右手の傷が疼いたような気がした。 魔法少女リリカルなのはStylish 第十二話『Black Magic』 ホテル<アグスタ>の地下駐車場の奥には、参加者の車両からは離れてオークション用の商品を積んだ輸送車が並んでいた。 大小様々なサイズのコンテナを搬入口から運び込んでいく。 その中でも成人男性でも入れそうなほど一際巨大なコンテナを、作業員が開いていた。 ウロボロス社のロゴが刻印されたコンテナから引き出された物を見て、作業員の一人が思わず小さな悲鳴を上げた。 「何ビビってんだよ」 「だ、だってよ……」 「仕方ないさ。こんな薄気味悪い物までオークションにかけようなんてよ」 コンテナの中に納まっていた物―――それは人形だった。 小さく折り畳まれてコンテナに入っていたものの、両肩を吊って持ち上げれば、力なく垂れ下がった両脚を含めて2メートル以上の全長を持つ巨大な操り人形だ。 風化した枯れ木のような骨組みで構成され、その上にボロボロの衣装を纏った姿は確かに年代を感じさせるが、それ以上に生々しい気配を放っている。 まるで人骨で作られているかのように錯覚する全容は、薄暗い地下で見るにはあまりに不気味だった。 「ウロボロス社の会長の私物だろ? いい趣味してるよな」 「コイツはサンプルとして会場に持ってくらしいけどよ、実際には同じようなのを30体くらい出展するらしいぜ」 そう言ってトレーラーの中を指差した仲間に促されて覗き込めば、同じサイズのコンテナが10以上積み込まれていた。 それら全ての中に、この不気味な人形と同じ物が折り畳まれて入っていることを想像すると、全身が総毛立つ。 「こんな不気味な物、欲しがる変態がいるのかよ?」 「金持ちの考えることは庶民にゃ分からんね」 「おい、さっき別のトレーラーで同じウロボロス社のコンテナの搬入手伝ったけどよ、そっちも錆びた処刑刀だの染みだらけのボロ布だのがギッシリ詰まってたぜ」 「ホラー映画でも作ってるのかよ、あの会社は」 物が物だけに談笑といえるほど明るい雰囲気にもなれず、ぼやくように会話をしながら彼らは出展用のハンガーへ人形を固定していく。 言葉を絶やさないのは、彼らの無意識に巣食う不安と恐怖を表しているようだった。 馬鹿げたことだと冗談のように内心の思いを笑っても、考えずにはいられない。 雑談を止め、辺りに沈黙が戻れば、その懸念が現実のものとなりそうな不安を、彼らは消すことが出来なかった。 ふと、その人形の精巧に彫られた虚ろな顔を見てしまった瞬間に子供のような恐れが湧き上がる。 まるで、本当に今にも動き出しそうに思えて―――。 「オークション開始まで、あとどのくらい?」 《Three hours and twenty-seven minutes.(3時間27分です)》 バッグのアクセサリとして待機モードでぶら下がっていたバルディッシュの答えを聞き、フェイトはロビーの吹き抜けを見下ろした。 事前の構造図も含め、既に現場の下見はほとんど終わっている。 オークションの会場となるホールから始め、出入り口や裏口などへ続くルートを歩いて確認しながら、フェイトははやての言う<営業>もなんとかこなしていた。 すれ違う客に社交辞令のスマイルと挨拶を無料で振り撒いていく。 時折向けられる男性の好色を含んだ視線も慣れたものだった。 しかし、そういった視線を自覚する度にロビーで向けられた全く種類の違う好奇の視線を思い出す。 アリウスがフェイトに向けた視線の意味。 あの冷たくも粘度を持った視線の意味を察すれば、背筋に寒気が走り抜ける。 アレは、人を見る眼ではない。まるで芸術家の作品を鑑定するかのような瞳だった。 あの時あの男は、自分を人間として見ていなかった。 「ひょっとしたら、私の事を―――」 知っているのだろうか? この身が、純血の人間では無いと。 10年前に決着を着けたはずの『自分に対する不安』が思い出したように頭をもたげてくる。 それを不屈の精神で抑えようとして、故に気付かなかった。自身の根幹に根差すこの不安を消すことなど出来ないのだということを。 生まれた瞬間に定められた運命は、死ぬ瞬間まで消えはしない。 友情や決意の中で薄れていったその重みを、ふとした時に思い出すのは決して避けられないことなのだと、フェイトは認めることが出来なかった。 そうして、己の思考に没頭して歩くうちに人気の無いホテルの裏口まで着いてしまう。 我に返ったフェイトは慌てて意味もなく辺りを見回した。 「迷子かい、お嬢さん?」 まるで自分の動揺を見透かしたかのように唐突に声を掛けられて、フェイトは思わず背筋をピンと伸ばした。 何も後ろめたいことなど無い筈なのに無意識に恐る恐る振り返れば、男が一人立っている。 貴族然とした紫色のスーツとコートを来た姿は警備員などではない。表情も微笑を浮かべ、リラックスしている。 それらを確認して、フェイトは内心で安堵のため息を吐いていた。 「はい。オークションの会場に行きたいんですけど、迷ってしまって」 「それでこんな所まで? 方向音痴なお嬢さんだな」 淀みなく言い訳を口にして、男もまた嫌味の無い笑い方で答える。 好感の持てる穏やかな物腰に、フェイトも思わず微笑みを浮かべていた。 男の口調は若さを感じさせる軽快なものだったが、どこぞの貴公子とも思える秀麗な姿はギャップがあって、奇妙なユーモアを感じさせた。 見事な銀髪を後ろに撫で付け、左目に嵌めた片眼鏡(モノクル)は黙っていれば随分と年上の印象を与える。 あのアリウスとは全く違う意味で人の目を惹き付ける男だった。もちろん良い意味でだ。 「だが、こんな見た目麗しいお姫様を放ってはおけないな。アンタには、こんな人気の無い場所よりダンスホールの真ん中を陣取ってた方が似合ってる」 大げさなようでいて決してお世辞の意味など含んでいない台詞を吐き、男はダンスに誘うように手を差し出した。 「壁の花にするには勿体無いぜ。よければ、俺にエスコートさせてもらえないか? お嬢さん(レディ)」 そう言ってウィンクする男の仕草は芝居染みたものなのに、ビックリするほど様になっていた。 妖艶な色気すら感じる仕草と言葉を前に、フェイトは頬が熱くなるのを感じながらも、これまで出会ったことの無いタイプの相手に対して魅力を感じてしまう。 「―――宜しいですか、紳士さん(ジェントル)」 そしてこちらも全ての男を虜にしてしまいそうな蟲惑的な笑みを無自覚に浮かべると、そっと手を差し出した。 手と手が触れた瞬間、フェイトの持つ傷が一瞬疼いた。 しかし、そこに伴う痛みは苦痛などではなく、何処か甘美なものだと錯覚すらしてしまう。それを痛みだと気付かせないほどに。 そうして歩いていく浮世離れした美男美女の二人を、すれ違う者達全てが羨むように見ていた。 オークション会場となるホールを見渡していたはやてとなのはの下へ男連れで戻ってきたフェイトに対する二人の驚きは、もちろん大きかった。 「……え? 何コレ? え、職務中に男引っ掛けて来よったよこの娘。え、ナニソレ? それは出会いの無い私への当てつけ?」 「はやてちゃん、さりげなく錯乱しないで」 何故か予想以上のショックを受けるはやてをなのはが正気に戻し、改めて苦笑を浮かべるフェイトと傍らの男に向き合った。 「ええと、フェイトちゃん。こちらの方は?」 「『迷って』裏口まで行っちゃってたところを助けてもらったんだよ」 なのはに目配せして、フェイトは口裏を合わせる意図を伝えた。 別に<機動六課>であることを隠す必要はないが、客の中に溶け込んで護衛をする以上、必要以上に身分を明かすこともない。 何より、彼の自然と心を許してしまう気安い物腰が、何となく『仕事を挟んだ付き合いでいたくない』という気分にさせていた。 まるでリズムを感じるような男とのやりとりが、名前すら交わしていないことを気付かせないほど心地良いと思えるからかもしれない。 会釈するはやてとなのはを見つめ、男は感嘆のため息を漏らして頷いた。 「驚いたね、美人の友達はやっぱり美人ってワケだ」 「お上手ですね」 「生憎とお世辞は苦手でね。綺麗な女を褒める時は、本音で語るのが一番さ」 「そこまでストレートに言われたのは初めて、かな」 「オークションなんて辛気臭いもの止めて、ダンスパーティーにするべきだな。是非踊ってみたいね」 「場所さえ改めれば、わたしも喜んで」 男となのはの間でリズミカルに言葉が投げ交わされる。 なのはにとっては慣れた社交辞令なのに、何処か小気味のよい会話だった。 話す事が上手いのだろう。気障な台詞や比喩を嫌味無く言えて、しかもそれが似合ってしまう。ある種の才能を持った男なのだと思った。 フェイトが感じたものと同じ新鮮さを、なのはもまた感じている。 その一方で、こういった会話を一番テンション高く楽しみそうなはやては、出会った時からずっと沈黙を保ったまま男の顔を見つめていた。 「そちらのお嬢さん。俺があんまりいい男だからって、そんなに見つめるなよ。穴が空きそうだ」 「―――あのぉ、何処かで会ったことありませんか?」 「おっと、まさか女性の方から口説かれるとは思わなかったぜ」 ナンパの常套手段とも言える台詞に対して男は苦笑して見せたが、はやては真剣な眼差しのまま答えを待っていた。 それに気付いた男は肩を竦めると、首を横に振って返す。 「いいや。残念だが、アンタと会ったことは『無い』な」 「そうですか……いや、でも確かにこんなええ男と会ったんなら例え10年前でもしっかり覚えてるはずやしな」 「ハハッ、なかなか正直に言ってくれるじゃねえか」 「そしてもちろん、私みたいな美少女を見て、忘れるはずもないですしね?」 「ああ、全く同感だね」 神妙に頷く男とはやては再び視線を合わせ、やがて堪えられなくなったように二人して笑い出した。 やはり、二人のテンションの高さは奇妙なシンパシーを得るに至ったらしい。 酷く自然なこの組み合わせを、なのはとフェイトは苦笑しながら傍で見守っていた。 放っておけば、このまま四人で飲みにも行けそうな和気藹々とした雰囲気だったが、生憎とはやて達三人には職務がある。 「―――さて、このまま潤いのある会話を続けたいところだが、ちょいと野暮用があるんでね。オークションもそろそろ始まる時間だ」 それをまるで察しているかのように、男がキリのいい所で談笑を切り上げた。 「貴方もオークションに参加するんですか?」 「いや、付き人みたいなもんだな。会場にはいるつもりだが」 「うーん、贅沢な付き人やなぁ。その雇い主さんは、ええ趣味してますね」 「俺もこういうのは苦手なんだがね。オークションが終わったら、今度は私的な再会を是非望みたいな」 「私もです―――それじゃあ」 「ああ、またな」 今度は社交辞令などではない、僅かな名残惜しささえ見せて、フェイト達はその男と別れた。 気が付けばお互いの名前さえ知らなかった。 それを後悔しながらも、切欠を思い出せば別段不思議ではないささやかな出会い。 しかし、それは三人にとってやけに印象に残る出会いだった。 知らぬうちに、三人が同じ再会を願う程に。 そしてそれは、すぐに現実の事となる。 三人の美女と別れたダンテは、この不本意な依頼に対して少しだけやる気を取り戻していた。 ホテルを徘徊する人間は、やはりダンテにとってあまり好かないタイプの成金ばかりだったが、幾つか気に入ったこともある。 まず第一に、レナードの用意した<仕事着>だった。 紫を貴重とした貴族のような服は彼の好むロックなデザインとは程遠かったが、黒だの白だののタキシードなどよりはるかにマシだ。コートのデザインも悪くない。 レナードに言わせれば、これでも仮装パーティーさながらの派手な格好らしいが、それを着こなすセンスと自負がダンテにはあった。 第二に、なかなか魅力的な出会いがあったことだ。 間違っても深窓の令嬢が訪れるはずもない俗物の集いだと思っていただけに、裏口で美麗な女性と遭遇した時は一瞬何かの罠かと錯覚するほどの衝撃を受けた。 思わず声を掛けて、建物の下見をしてこんな人気の無い場所を徘徊していた自分は随分怪しいのではないかと我に返った時にはもう遅い。 迷子のふりでもするか? と悩む傍で相手が似たような返答を返す。 自分のことを棚に上げて、そんな彼女がまともな令嬢などではないのだろうと疑ったが、しかしそれこそダンテにとってはどうでもいいことだった。 若い女。しかもそれが類稀なる美人となったら、無条件で味方をするのが男というものだ。 女性としては高い身長に、プロポーションもバッチリ。何より、あの長い髪がいい。金髪(ブロンド)は好みだ。 そんな彼女と連れ立って向かった先でも更に二人の美女と出会えた。 今回は珍しくワリの良い仕事ではないか? あのケチな情報屋の手引きを柄にもなく感謝してしまいそうになる。 そして何より、第三に―――。 「退屈な時間になるかと思ったが、なかなかどうして……胸糞悪い空気が漂ってるぜ」 ダンテの持つ第六感が、慣れ親しんだ警鐘を鳴らしていた。 ロビーのシャンデリアと窓からの太陽光が明るく照らし、穏やかな静寂が満ちるこのホテルで、おおよそ想像もつかないような悪夢が生まれることを予見できる。 この場にいる人間達の中でただ一人、ダンテだけがそれを感じていた。 このホテルに潜む、複数の<悪魔>が放つ微細な気配を。 「観客が多すぎるな。派手なダンスパーティーになりそうだ……」 確信にも近い、地獄の幕開けを予感しながら、それをただぼんやりと幻視するだけで留める。 自分は預言者ではない。勘だけで危険を予感し、それをあらかじめ警告したところで執りあう者などいるだろうか? <悪魔>などと騒ぐだけで狂人を見るような眼を向けるのだ。 人間は自分の理解の及ばないものを受け入れようとしない。見ることすら耐えられず、知ることにも恐怖する。 ならば、彼らが<悪魔>の存在を認める時は現実にそれが降り立った時だけなのだ。 ダンテは自分か、あるいはそれ以外かを嘲笑するように鼻を鳴らし、静かにオークション開始直前となった会場へと足を踏み入れて行った。 最後の参加者の入室を確認し、静かにホールへのドアが閉まっていく。 やがて、最後の扉が閉まり―――舞台開始の合図が鳴った。 人口の密集する喧騒を避け、豊かな自然の中に建てられたホテル<アグスタ>は周辺を森林に囲まれている。 車の通りが少ない車道を越えて、ホテルの一角を僅かに見上げられる程離れた場所に、その三人は佇んでいた。 「あそこか……」 「本当に、手を貸すの?」 一際大柄で服の上からでもその屈強な肉体が分かる男と、その男ほどではないにしろ長身で美しく若い女。そして、額に刻印を刻まれた少女。 親子とも連れ合いとも思えない奇妙な三人組が、人気の無い森の中で息を潜めるようにフードを被ってホテルの様子を伺う姿もまた奇妙極まりない。 「アナタの探し物は、ここには無いんでしょう?」 男と同じ鋭い視線を目的の場所へ向けていた女は、自分の左手を掴む小さな少女へ柔らかく問い掛ける。 少女はフードを取り、女を見上げて小さく頷いた。 悲しいことに、無垢なその顔にはおおよそ表情と呼べるものが浮かばない。 少女が年相応の反応を失って長い。少なくとも、その女の知る限りは。 「ゼスト」 気を取り直すように、女は傍らの男の名を呼んだ。 心得たようにゼストは頷く。 「ルーテシアは、何か気になるらしい。この子の感性は独特だ。無視は出来ない」 不満げな女を宥めるように説明すれば、合わせて少女―――ルーテシアもまたもう一度頷いて見せる。 目元をフードで、口元を襟で隠した女は、小さなため息で自身の納得と諦めを表現した。 「―――ルーテシアが自発的に動きたいなら、構わない。いくらでも付き合う。 でも、今回の事にあのマッドサイエンティストの余計な入れ知恵や小ズルイ催促はなかったの?」 「それは……」 自然と剣呑になる女の問いに答えようとゼストが口を開いた時、丁度話題の中心となる人物から通信が繋がった。 三人の眼前にホログラムのモニターが出現し、そこに映った人物を見て、少なくとも二人が不快感と警戒を露わにする。 一方は厳つい顔を更に引き締め、もう一方は柳眉を鋭く吊り上げることで。 『ごきげんよう。騎士ゼスト、ルーテシア、そして―――』 通信先の人間―――スカリエッティが自分の名前を呼ぶ前に、女は無言で顔を背け、背まで向けた。 拒絶を超えた敵意故にであった。 取り付くしまもない仕草に、スカリエッティは愉快そうに忍び笑いを漏らす。 「ごきげんよう」 「何の用だ?」 相手にもしない一人に代わって、残りの二人が抑揚の無い声と素っ気の無い声で応える。 『彼女も君も冷たいねぇ。随分と嫌われてしまったものだ』 「さっさと用件を言え。その彼女の機嫌はお前の話が長引く度に悪くなっていく。モニター越しに斬られたくはないだろう」 『ははっ、本当に在り得そうで恐ろしいなぁ』 この不穏な会話を、スカリエッティだけが純粋に楽しんでいた。 苛立ちも悪態も見せず、全くの無反応を貫く女の背中を一瞥して、彼はようやく観念したかのように本題を切り出した。 『事前の打ち合わせ通り―――そろそろ行動開始の時間だ』 意味深げなスカリエッティの台詞を聞き、ゼストはもう一度ホテルに視線を向けた。 変わらぬ姿で、そこは静寂を保っている。 「もうホテルの襲撃は始まっているのか?」 『確認は出来ないが<彼>はもう内部に入っているし、今は丁度オークション開始予定時間だ』 「協力する相手と連絡すらまともに出来ていないのか」 『<あの男>とはあくまで利害関係による繋がりだからねぇ。申し訳ないが、今回我々は受身だ。 内部で動きがあると同時に、こちらもガジェットを向かわせる。後は―――分かるね? ルーテシア』 「うん、分かった」 『良い子だ』 自分ではなく、あくまでルーテシアに話を振って了承を得ようとするスカリエッティの小賢しさに、ゼストは不快感を隠せなかった。 この男は、ルーテシアの意見を自分と彼女が無碍に出来ないことを理解して、そこに漬け込んでくる。 何よりも厄介なのは、このどれほど疑っても足りない胡散臭さを形にしたような狂人を、ルーテシアが意外と好ましく思っているという事だった。 今のゼストが抱く感情は、娘が軽薄な男と付き合いながらもそれを説得して止める術を知らない親が持つ苛立ちに酷似している。 そして、そこに殺意を加えたものが、背後の彼女がスカリエッティに抱く感情だ。 「……今回は特別だ。現場にも近づかない。 我々とは、レリックが絡まぬかぎり互いに不可侵を守ると決めたことを忘れるな」 せめてもの抵抗として、ゼストはモニターの先の薄ら笑いを睨みつけながら釘を刺した。 『ああ、もちろんだとも。それを踏まえて、ルーテシアの優しさには深く感謝しよう。 ありがとう。今度是非、お茶とお菓子でも奢らせてくれ。もちろん、他の二人も―――』 「話は終わりだ。消えろ」 高速の一閃が、文字通りスカリエッティの台詞を途中で寸断した。 空中に照射されていたホログラムを、電子的な手順を踏まずに鋼の一撃によって真っ二つに切り裂く。モニターを形成していた粒子が霧散し、通信は『消滅』した。 ルーテシアでなければゼストの仕業でもない。 思わず二人が振り返れば、そこには変わらず背を向けたまま佇む女の姿がある。 一体、何をどうやったのかは分からない。しかし、会話を切り上げた冷たい声は間違いなく彼女のものだった。 「……<ルシア>」 僅かに咎めるような感情を含み、ルーテシアは彼女の名前を呼んだ。 ルシアは苛立ちに任せるように、フードを取り払う。 そして美しい肉体に吊り合った美貌が姿を現した。 燃えるような赤い髪を一房の三つ編みにして肩から前へ垂らし、褐色の肌を持つしなやかな女戦士は、少女の抗議に対して小さく鼻を鳴らして見せる。 「いつまでも長々と話してるからよ。あの男の会話の7割は無駄話なんだから」 「だからって斬らないで。<アスクレピオス>の通信機能が壊れる」 「ゴメンなさい。でも、アナタの為でもあるのよ」 「わたしは、ドクターとお話しするの、そんなに嫌いじゃないから」 「ああ、ルーテシア。アナタの男の趣味だけが将来の不安だわ」 「どういうこと?」 決して穏やかではないが、ルシアのルーテシアに対する態度は先ほどのスカリエッティに対するそれと比べて全然柔らかい。 まるで妹に接する世話焼きの姉のようだ。 事実、ゼストの知る限り二人の関係は<姉妹>が一番近い表現であった。 普段は女である前に戦士であろうとするルシアの物腰の変化も、これでは苦笑を浮かべずにはいられない。 険悪なやりとりの後で、束の間穏やかな空気が三人の間に流れていた。 「……それじゃあ、そろそろ始める」 しかし穏やかな時間はすぐに終わり、憂鬱な時間が始まる。 少なくともゼストとルシアにとって、この少女が自らが行おうとしている所業に何の感慨も感じないまま闇に手を染めるのは憂鬱以外のなにものでもない。 コートを脱いだルーテシアは両腕のグローブ型デバイス<アスクレピオス>を起動させる。 「吾は乞う、小さき者―――<群れる者>」 ルーテシアの囁く詠唱に呼応して、足元に闇が生まれた。 それは比喩などではなく、滲むように広がる虚ろな黒い染みだった。 ベルカ式でもミッドチルダ式でもない。はっきりとした術式すらなく、故に魔方陣さえ発生しない。魔法の<行使>というより<現象>のような出来事。 文字通りの<黒い魔法>は、人におぞましさを与える光景を、少女を中心にして繰り広げる。 「言の葉に応え、我が命を果たせ。召喚―――」 ルーテシアを中心に広がった、暗黒の湖畔から湧き出るように奇妙な煙が立ち昇った。 目を凝らせば、それらが微細な黒い粒の集合によって形成された煙だった。 「<スケアクロウ>」 そして、その粒の一つ一つが肉眼ではハッキリと確認出来ないほど小さな未知の甲虫であった。 無数の虫が群れ、煙や霧としか認識できない黒い塊となって甲虫は動き始める。 地を這い、空を舞い、何かが擦れるような無数の奇怪な音を波立ててソレは移動していった。 真っ直ぐに、ルーテシアの視線の先―――ホテル<アグスタ>へと向けて。 「……ゼスト。ルーテシアをお願い」 人が扱ってはならない禁忌の魔法を目にしていた二人のうち、おもむろにルシアが告げた。 口元を隠し、再びフードを被り直して、トランス状態で魔法を行使するルーテシアの横顔を一瞥する。 その視線には、先ほどまでの純粋な暖かさは無い。複雑な迷いを含んだ感情が渦巻いていた。 「行くのか」 「戦闘の混乱の中で目標物を奪うのが目的なら、戦いは見せかけだけでいい。人死には極力避けたい」 「そうだな……会場内部には手を出すな。そこから先は、警備と運に任せておけ」 「私もそこまで善人じゃない」 ルシアは剣呑な視線と冷笑を浮かべて見せた。 しかし、彼女の心に冷酷な犯罪者とは無縁な正義の心と見知らぬ他人であってもその死を悼む優しさがあることを、ゼストは知っている。 そして何よりルシアとゼストの二人には、幼いルーテシアが無自覚に人を傷つけ、殺すことを防ぎたいという意思があった。 彼女が呼び出し、使役する存在は嬉々として人の命を飲み込むのだ。 奴らが生み出す闇に、何も知らぬ少女まで引き摺り込ませるわけにはいかない。 いずれ彼女が本当の人生を取り戻し、自らの罪を自覚した時に、その重みが少しでも軽くなるように。 「それに―――」 言い淀み、ルシアはルーテシアの足元に広がる闇の世界へと繋がる扉を見下ろした。 「私にとって、やっぱり<悪魔>は敵だ」 完全な敵意を吐き出して、ルシアは走り去っていった。 戦場となる場所へ駆けつける戦士の背中をゼストはいつまでも見送り続ける。 ルシアとは別に、彼の中にも複雑な想いが宿っていた。 ルーテシアとルシアも含む、娘同然に想う二人の少女が歩む不遇の人生とその将来を案ずる気持ちだった。 <悪魔>と縁を結んでしまった少女と、その<悪魔>を憎む少女。いずれも闇に関わりを持ってしまった故に平穏な日々から抜け落ちてしまった。 若い彼女達には未来がある。 しかし、その輝かしい未来に、もはや既に黒い染みは付きつつあるのだ。 全てをリセットして普通の人生をやり直すなんてもう出来ない。今後の人生で引き摺っていかねばならない経験を、二人の少女はしてしまった。 それが痛ましくてならない。かつて、そんな人の未来を守る為に自分は戦っていたというのに―――。 「所詮、私は悪魔に魂を売った死人か」 無力な己を嘲りながらも、ゼストは祈らずにはいられなかった。 「……神よ。願わくば、地獄に落とすのは私だけにしてくれ」 全ての罰は魂を抜かれたこの身に。 彼女達にせめて未来を返してくれたのなら、この生ける屍は喜んで地獄に落ちよう。 彼女達の人生を狂わせた闇の住人達を共に引きずり込み、本来在るべき場所へ再び封じてやる。 戦士の悲壮な覚悟を嘲笑うように、視線の先にあるホテルからは黒煙が上がり始めていた。 地獄が始まる。 『お待たせいたしました。それでは、オークションを開催いたします』 開始を告げるアナウンスは予定していた時間通りに流れていた。 客席から起こる拍手の中、二階からホールを一望しているなのはとフェイトは思わず安堵のため息を吐き出す。 警備はオークションが終了するまで続くが、とりあえず事前に問題が起こることはなかったのだ。 警戒していた何らかの襲撃の可能性が一つ減ったことは彼女達の緊張の糸を一本解してくれた。 「とりあえず、出だしは順調だね」 「このまま、何事も無く終わればいいけど」 なのはの安堵にフェイトが水を差すように告げたが、その声に張り詰めたものはない。 元より確定した襲撃の可能性や、列車襲撃時のような現在進行形の緊迫感はない任務なのだ。 油断は無くとも、二人には余裕があった。 『―――ではここで、品物の鑑定と解説をしてくださる若き考古学者を紹介したいと思います』 なのはとフェイトが見守る中、会場に設けられたステージに一人の青年が登場する。 その青年の姿を見て、二人は思わず目を白黒させた。 『ミッドチルダ考古学士会の学士であり、かの無限書庫の司書長―――ユーノ=スクライア先生です!』 万雷の拍手を浴びてステージに現れたのは、二人にとって幼馴染であり親友でもある人物だった。 意外な場所での再会に、なのはもフェイトも言葉を失う。 停止した思考の代わりに感情がまず何よりも純粋な喜びを湧かせてくれた。 「ユーノ君……」 「なのは、この事聞いてた?」 「ううん、初めて知ったよ」 なのはの声には隠せない喜びと高揚がある。 お互い、昔のように簡単に会えるほど自分の立場は軽くはない。 結んだ絆は切れはしないが、それでも少しずつ距離は開いていくような気がして、そのことに諦めも感じ始めていた。 六課の発足で忙しくもなり、そんな寂しささえ忘れかけていた時に、このサプライズだ。 もちろん仕事のことは忘れない。でも仕事が終わったら? 別にちょっと話したり、食事の約束をつけるくらいはいいんじゃない? 珍しく興奮する親友を見て、フェイトは苦笑した。 「今日は久しぶりに四人で話せそうだね」 「うんっ。はやてちゃんも、早く戻ってくればいいのに」 「配置の指示、遅れてるのかな?」 ホールの外で、現場のシャマルやオペレーター達と情報を確認し合っているはずのはやてを思い出す。 出入り口を一瞥すれば、そこはまだ閉ざされたまま誰も訪れることはなかった。 そうしているうちに、ユーノらしい堅実で当たり障りのないスピーチは終わり、いよいよオークションが始まる。 『まずは出展ナンバー1とナンバー2の商品。かの有名なウロボロス社のアリウス氏から提供された由緒ある逸品です』 司会の言葉と共にステージの奥から防護ガラスのケースに納められた品物が運び込まれ、ホールに客のどよめきが低く流れた。 それは感嘆と―――畏怖によるものだった。 「なんだか……少し気味の悪い品だね」 「うん」 なのはの呟きは、客のほとんどが感じている感想の一部を端的に言い表していた。 ステージに運び込まれた品物は、いずれも歴史と風格を感じる、古い一本の剣と一体の人形だった。 絡み合う蛇の装飾が施された異常に長い剣も人を殺める武器としての不気味な迫力を放っていたが、何より人形の方が一際異様だった。 実際は木製のようだが、表面に滲んだ得体の知れない染みと着せられた血のように赤い衣服。そして虚ろな空洞を瞳にした顔が、無機物に生気を宿らせている。 ハンガーに固定されたその姿は、磔にされた罪人の遺体を連想させた。 薄ら寒い不安を感じさせる様は、確かに見る者によっては骨董品としての意趣を感じさせるかもしれない。 しかし、少なくともなのはとフェイトにとって、その人形は悪趣味を超えた怖気を感じるものだった。 『……これは、かなり見事な品物ですね。少なくとも、経過している年月はかなり古い物です』 ユーノもまたその違和感を感じたらしい。 しかしもちろん、アリウス本人が何処かにいるはずのこの場で下手な発言はせず、鑑定に集中している。 『こちらの剣は柄に銘が掘られています。名前は<マーシレス> 材質はほとんどが鉄のはずですが、不思議なことに刀身などに劣化が見られません。 しかし、魔力反応もほとんど無く、武器としては極めて原始的な―――』 ガシャン。唐突に、ユーノの言葉を遮る音が響いた。 その音の発生源を、誰もが正確に見つけることが出来た―――人形の入ったケースだ。 小狭いケースの中で、文字通り崩れ落ちるように人形がハンガーから外れ、関節を奇怪な方向へ曲げて蹲るように倒れていた。 「お、おい! 何してるんだ、早く元に戻せ!」 オークションの流れを寸断するに足る思わぬ失態に、ステージの脇に控えていた作業員は顔を青くして動き出した。 自分達にミスはない。しっかりと固定したはずだ。そんな不可解な思いを分かりやすく表情にしながら、数人が慌ててステージの中心へ駆け込んでくる。 誰もがユーノの解説に聞き入って視線を剣の方へ集中させていた為に、誰もが気づくことはなかった。 枯れ木のような見た目通りの軽い重量では決して起こり得ない、その人形がハンガーの固定から外れて倒れた原因に。 「痛っ」 フェイトの手に痛みが走る。一瞬だけ。右手に。 広げた手のひらに視線を落としたフェイトは目を見開いた。 古傷を覆い隠す白い手袋から、ゆっくりと広がるよう赤い染み。滲み出るそれが血ではなく、黒い闇のように錯覚する。 慣れ親しんだ痛みが、フェイトの脳裏に激しく警鐘をかき鳴らした。 これが意味するものは―――。 「……っ! 全員その人形から離れろォ!!」 全力で不吉を告げる勘のまま、フェイトが絶叫した。 惨劇の始まりを目にしたかのような切迫した叫びに、誰もが驚き、身を竦ませ、声の方向へ視線を走らせて―――皆が本来注意を向けるべき存在を理解していなかった。 《GYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA―――!!》 甲高い悲鳴が、その場にいる人間全ての鼓膜と精神を揺るがした。 それは確かに<悲鳴>に違いなかった。 生きた人間が上げるようなものではない。この世の生きる者全てを妬み、恨む、あるいは<悪霊>と呼べるような者達なら上げられるような呪われた叫びだった。 その声の発生源を囲ったガラスケースは激しく振動し、やがて耐え切れずに内部から破裂して無数の破片を客席にぶち撒ける。 客が降り注ぐガラス片に悲鳴を上げる中、自由になったソイツはゆっくりと起き上がった。 ―――糸の無い操り人形(マリオネット)が、見えない生命の糸に吊り上げられるように。 「こ、これは……?」 「ユーノ、ソレから離れてっ!!」 誰もが逃げることすら出来ずに硬直する中、全力で自身に働きかける危機回避本能に従って後退るユーノと、それ以上の意志の強さでフェイトが動いた。 二階の客席から一階まで飛び出し、持ち前の運動神経で無理なく着地を決めると、ステージに向かって一直線に駆けつける。 デバイスの補佐なくしては追随出来ない彼女の動きを、なのはは一瞬見送ることしか出来なかった。 ドレスの裾を振り乱すのも構わずフェイトは駆ける。 少なくとも人間以外の生命と意思が宿った人形は、自力ではない何者かに操られるような不自然な動きで歩みを開始した。 その不幸な行き先には、ユーノがいる。 フェイト以外の誰もが、ホラー映画の中の人物のように目の前で惨劇が起ころうとしながらも凍りついたように動けなかった。 画面越しの演出された恐怖とは違う現実の恐怖が、彼らの心を鷲掴んで動くことを許さないのだ。 「フェイトちゃん! ユーノ君ッ!!」 なのはには身を乗り出し、何かに祈ることしか出来なかった。 ユーノの眼前で人形は懐から錆びた短剣を取り出し、虚ろな殺意を持ってそれを振り上げた。 怨嗟の雄叫びも、狂気を含んだ哄笑も無く、ただ無機質に殺人が行われようとしている。 それを止められる者はいなかった。 ただ一人、フェイトを除いて。 「ユーノォ!」 美しいだけではない力を秘めた俊足で、フェイトはその致命的な瞬間に間に合った。 ステージに駆け上がり、短剣が振り下ろされる瞬間にユーノを押し倒すようにしてその場から離す。間一髪、その空間を錆びた刀身が空しく切り裂いた。 「フェイト!? どうしてここに……っ!」 「話は後! 奥に下がって、すぐに逃げて!!」 唐突な再会を驚く暇すら与えず、フェイトは立ち上がって再びこちらへ視線を向ける人形を睨み付けた。 先ほどと異なる点は、その人形がユーノではなくフェイトに狙いを変えたことだった。 「バルディッシュ、セット……ッ!?」 すぐさま戦闘体勢を整えようとデバイスに呼びかけるフェイトの声を、またもやあの呪われた声が遮った。 人間を模した人形の口が開き、その奥からおぞましい音が響き渡る。それは口というよりも蓋や扉が開くようなイメージを抱かせた。 耳を覆いたくなるような奇声がフェイトの鼓膜を震わせ、脳が揺れ、背筋に悪寒が走り抜けて気分が悪くなり―――そしてようやく気付いた。 「か、体が……動かないっ!?」 見えない糸のようなものが全身に絡みつき、体の自由を奪っているのが感じられた。 強張る筋肉とは裏腹に激しい脱力感が襲い、フェイトは空中へ吊り上げられる。 まるで自分が操り人形になってしまったかのように錯覚する。自分の意思では全く体が動かせない。 バインドとも違う未知の金縛りに陥ったフェイトは、短剣を振り上げる人形を睨みつけることしか出来なかった。 人形の顔の空洞に宿った、血のように赤い眼光を必死で睨み返す。 親友の危機に、ユーノが硬直した体の戒めを破壊して、なのはがデバイスを発動させながら飛び出す。 しかし、そのどれもが間に合わない。 無慈悲な刀身は振り下ろされ、白い肌が鮮血に染まる未来が確定しかかった時―――その男は間に合った。 「ィィイヤッッハァァァーーーッ!!」 景気付けるような雄叫びと共に人間ロケットが飛来した。 ユーノの防御魔法よりも、なのはの攻撃魔法よりも速く、彗星の如く飛び込んできた第三者の両脚がフェイトを襲う人形を吹き飛ばす。 硬いブーツの靴底を顔面に直撃させ、ステージの壁に激突した人形は、関節を滅茶苦茶な方向へ曲げて崩れ落ちた。 すぐ傍で呆然としていた司会者がようやく我に返り、奇声を上げて後退る。 誰もが息を呑んだ惨劇の中へ乱入した―――プロのリングでも通用するような華麗なドロップキックを決めた男は、その場の視線を全て受けながら立ち上がる。 「ア、アナタは……」 人形が倒れると同時に金縛りから解放されたフェイトは、酷く覚えのあるその長身を見上げた。 紫色のコートが翻る。 振り返った男の顔には、悪夢に迷い込んだのではなく自ら飛び込んでみせた自信と戦意が滾っていた。 男は笑った。初めてフェイトに会った時、彼女に見せたように。 「―――よお、ベイビー。また会ったな。これだけ短い時間で再会出来たんだ、こいつは運命だと思っても構わないだろ?」 冗談交じりにそう言って、ダンテは不敵に笑った。 「綺麗なだけじゃなくガッツもある。いいね、ますます好みだ」 「……っ! 逃げて!」 「そういう無粋な台詞は釣れないぜ」 再び緊迫感に満ちた視線を自分の背後に向けるフェイトを苦笑して、ダンテは振り返りもせず、背後に向けて魔力弾を撃ち放った。 コートの裏から滑るように抜き放たれたデバイスは、立ち上がろうとする人形の顔面を正確無比に捉えて、一撃で顔面を吹き飛ばす。 頭を失った人形は支えを失ったかのように文字通り崩れ落ちてバラバラになった。 「銃型の、デバイス……」 「怪我は無いみたいだな。そっちの先生も大丈夫かい?」 「え? ええ、大丈夫です」 余裕すら持って、呆気にとられるフェイトとユーノをダンテは気遣っていた。背後で消滅する人形の残骸になど目もくれない。 バリアジャケットを纏って援護しようとしたなのはも、ただ呆然としていた客も、誰もがこの突然現れた謎の男を見ることしか出来なかった。 奇妙な静寂に包まれるホールを、ダンテはステージから一通り見回す。 何かを探るようなその視線を訝しげに思いながら、フェイトは意を決して話しかけた。 「あの……」 「助けた礼なら後でいいぜ。半分は仕事で、半分は俺のポリシーさ」 女性には優しくな。 悪戯っぽくウィンクしてみせる仕草に性的な魅力を感じて、フェイトは思わず頬を赤らめた。感情とは関係ない、若い女ゆえの反応だ。 しかし、管理局員としてこの疑問を蔑ろにするわけにはいかない。 「アナタは、何者なんですか?」 「そう、いい男にはそういう質問をするのがいいぜ。だが、自己紹介は後回しだ」 ダンテは軽口を叩きながらも、もう片方の手で二挺目のデバイスを取り出した。 既に、その眼光は穏やかさを失い、鋭い戦士のそれへと変貌している。 その意味を理解したフェイトが、同じく警戒を露わにして周囲を睨み付けた。 いつの間にか再び感じる右手の痛み。 「―――来るぞ」 ダンテの呟きがまるで予言であったかのように、異変は起こった。 誰もが予兆を感じることが出来た。 全身に覚える未知の悪寒。人間の持つ本能的な恐怖は彼らに警告し、そしてそれが全くの無駄であるかのように退路は塞がれる。 ホールから外部に繋がる全ての扉を覆うように、真紅の結界が発生した。 表面に幾つもの苦悶の表情を浮かび上がらせたその壁は、呪いのように扉が開くことを封じる。 もはや誰一人としてこの場から逃げ出すことが出来ないという現実を人々が理解するのは少し後の話。 ダンテ以外の誰もが閉じ込められたことすら気付かない閉鎖空間の中で、次々と悪夢が具現化し始めた。 ホールの各所で悲鳴が上がる。 そこへ視線を走らせれば、見たことも無い魔方陣が発生し、それを<穴>として先ほどの操り人形と同種の存在が次々と現れ出始めていた。 「これは召喚!? それとも、違うの……!?」 未知の現象に戸惑うなのはは、それでも事態の把握だけは正確に行っていた。 あの人形は全てが間違いなく敵だ。 標的はユーノ? フェイト? それともこの場にいる人間全て? いずれにせよ最悪の事態が始まりつつあった。混乱し始める多くの客を一望し、それら全てを守りきることへの絶望感が湧き上がる。 やらなければ。だが、出来るのか―――? 「そこの勇ましいお嬢さんは、このホテルの護衛に来てるっていう時空管理局の人間か?」 戦う意思を固めたなのはを、この場では不釣合いなほど気安い声が呼んだ。 視線を走らせれば、既視感を感じさせる珍しい二挺拳銃のデバイスを持ったあの男が不敵な笑みを浮かべたまま悪夢の発現を見据えていた。 「そ、そうですけど」 「なら客の護衛を頼むぜ。避難誘導はやめとけ、あの人形どもを倒さない限り、もうここからは誰も出られない」 「アナタは一体……」 「質問には、このバカ騒ぎが終わったらプライベートなことも含めて答えてやるよ」 彼は昂然と<敵>を睨み付けた。 その両手が華麗な舞を見せ、二挺の銃が優雅に、優美に宙を踊り狂う。 悪魔が取り憑いたかのような人形の群れと人々の阿鼻叫喚。その狂ったステージで、彼のパフォーマンスは驚くほど冴え渡っていた。 なのはが、フェイトが、ユーノが―――その場で冷静な者全てが、場違いな光景に釘付けになった。 回転する銃身が上質なタップダンスのように彼の周囲を跳ね回る様。 なのはの脳裏に連想して浮かぶものがあった。 「……ティアナ?」 信じ難い呟きは誰にも聞こえず消えていく。 壮絶な銃の舞はクロスしたダンテの腕の中で終了した。 「子供の頃から古臭い人形劇ってのは嫌いでね。どうせ見るなら爽快なアクション映画だ。そうだろ?」 誰にとも無く軽口を叩くダンテの元へ、ステージの裏からも複数の人形がにじり寄って来た。 最初の人形と同じように、搬入されたコンテナの中に居たモノが自ら動き出したのだ。 なのは達が四方八方に警戒を走らせる中、悪夢の出現は止まり、悲鳴を上げる人々を囲い込むように悪夢の出演者が入場を終える。 地獄の舞台は整った。 その中心に立つ男が告げる。 「さあ、始めるとしようぜ」 「……アナタは、魔法が使えるんですね?」 その男の正体を後回しにして、今はこの事態を共に切り抜ける為に戦いの意思を確認するフェイトへ、ダンテは鼻で笑って見せる。 「―――魔法だって? ハッハァ、銃(こいつ)を喰らいな!!」 周囲の<悪魔>どもに向けて、ダンテはいつものように銃をぶっ放した。 to be continued…> <ダンテの悪魔解説コーナー> マリオネット(DMC1に登場) 綺麗な人形に悪霊が宿って動き出したなんて話は良くあるよな? 殺人鬼の魂が宿った人形のホラー映画まであるくらいだ、人の形をした物に何かの自我が乗り移るという概念は珍しくはない。 だからこそ、人は分かりやすく恐怖する。そんな負の感情を利用しようと人形を媒介にして現れたのがこの悪魔だ。 悪魔狩人としちゃ、相手にする弾丸も勿体無い雑魚中の雑魚だ。誰もが考えるからこそありふれた悪魔だと言える。 その名のとおり外部からの力で操る仕組みのせいか、人形自体の耐久力も媒介になった物そのままだ。ちょいと手荒に扱えばすぐにぶっ壊れちまう。 ただし、その非力を補う為か短剣や銃まで使って戦い方を工夫する賢い奴も中にはいやがる。ありふれているからこそ、時代に合わせる柔軟性もあるってワケか。 そして、中でも<ブラッディマリー>と呼ばれる、自分の服を襲った人間の血で染めた赤い人形は曲者だ。 黒魔術などでも用いられる通り、血液ってのは魔力や呪いを秘めている。 その忌まわしい力が、人形に宿った悪魔まで強化しちまうんだ。人間の負の部分を力にする悪魔ってのは、やはり胸糞の悪い存在だぜ。 殺された人間も、勝手に乗っ取られた人形も、これじゃあ浮かばれない。 徹底的に破壊してこの世から消滅させてやるのが、そいつらにくれてやれる手向けって奴だろう。 [[前へ なのはStylish11話]] [[目次へ 魔法少女リリカルなのはStylish氏]] [[次へ なのはStylish13話]]
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フェイト「うわぁあああああああああ!!なのはぁ!殺す!殺す!殺す!」 なのは「お、落ち着いてフェイトちゃん!」 はやて「そや、ウチらも度が過ぎた、反省しとるん。」 フェイト「うるさいうるさいうるさい!貴方たちはもう友達なんかじゃない!」 クロノ「やめるんだフェイト!なのは達も反省してるって言ってるじゃないか!」 フェイト「クロノまで私を裏切るんだ・・そっか、はは、あはあははははははは!」 クロノ「や、やめてくれ!フェイト!それ以上は洒落にならな」 (グシャアアアアアアアアア!) なのは「ひっ!?」 はやて「きゃあああああ!!」 フェイト「あっははっはははっはははは!!!内臓がグチャグチャだね!!お兄ちゃん☆」 なのは「フェイトちゃん、もう、嫌!こんなの嫌だよ!」 はやて「取り返しのつかんことになってもうた・・」 フェイト「次は貴方達の番だよ、悪魔の血も赤いのかな。」 はやて「痛い!、やめてフェイトちゃん!お願いや!死にたくない!」 フェイト「死ね氏ね死ね!!!地獄に行って後悔しろ!この悪魔め!!」 (グッシャアアアアアアアア!!) はやて「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!」 フェイト「あはははははははは!痛い??痛いでしょう?でもね私が受けた痛みは こんなもんじゃないんだよ。腕一本じゃ割りに合わないよね」 はやて「あぁ、わわや、やふぇて・・・お願いします、もう、、たす」 フェイト「きゃははははははは!!!動かなくなったよ!!なのはコレ見て見て。」 なのは「きゃあああ!!やめてよそんな、お、おおぇえええ・・!」 フェイト「どうしたの、なのは。これがそんなに気持ち悪いの?親友なのにぃ。」 なのは「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」 フェイト「なのはぁ、私達二人っきりになったんだよ?もっと喜んでよ?」 なのは「あヴぁヴうううううんんんんn!」 フェイト「ほうら、苦しい??息できないもんね。苦しいよね。」 なのは「んんん!!ゲポ、がぁはああ、ゲホゲホ!」 フェイト「どう?このまま窒息させてあげてもよかったんだけど」 なのは「もう、、殺して・・早く殺してよ・・!!」 フェイト「あっははははははははは!そう簡単に殺してたまるか!! これ以上にないほどの地獄を味あわせてやる!少し、頭冷やそうか? あっはははははははははははははははははは!!!」 なのは「お、おかしいよ、こんなの絶対・・」 フェイト「ふふふ、これからね、なのはの爪を一本ずつ剥がしていこうと思うんだ」 なのは「・・!?」 フェイト「んふ☆心配しないでいいよ、こんなんじゃ人は死んだりしないから」 なのは「ってよ・・・」 フェイト「んん?」 なのは「戻ってよ・・・今までの優しかったフェイトちゃんに戻ってよ!」 フェイト「あははあははははっは!何を言い出すかと思えば! 今の私は優しくないのかな?なのはだけは今でも生かしておいてあげてるんだよ?」 なのは「違う!そんなのは優しさじゃない!」 フェイト「悪魔がよく言う・・」 なのは「私が悪魔なら、今のフェイトちゃんは鬼だよ・・」 フェイト「ひゃあははははははは!こりゃいい! 管理局の白い悪魔がなのはなら私は管理局の黒い鬼だね。」 バチン! バチン! バチン! なのは「あああああああああああ!!」 フェイト「なのはうるさいよ?静かにしてよ。爪を剥がしたくらいでオーバーだなぁ。 でも、思った以上に真っ赤かだね。タオルで拭いてあげる」 フェイト「あひゃあひゃはやああああははははは!! なのはの爪がなくなちゃったよ!!!」 なのは「・・・・・・。」 フェイト「あれれぇ、どうしたのなのは?恐怖し過ぎて声も出なくなちゃった?? あっはははははは☆でもまだまだこんなんじゃ終わらないよ!」 ガチャ アリサ「なのは~!いる~?」 すずか「あれ、なんか凄い変な臭いが・・」 フェイト「あ、アリサ。いらっしゃい☆」 アリサ「あら、フェイトじゃない。何でここに・・」 すずか「アリサちゃん・・・あれ、あれ見て・・!」 アリサ「ん?」 つづく
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【名前】フェイト・T・ハラオウン 【出典】仮面ライダーカブト 【声優】水樹奈々 【種族】人造魔導師 【性別】女性 【年齢】19歳 【外見】金髪の長髪を一つのリボンで纏めている。瞳の色は赤。 【性格】 大人しく温和な性格。心優しく、自分と同じ境遇の子供たちを放ってはおけない。滅多に怒る事はないが、怒った時は怖い。 【原作での設定】 フェイト・T・ハラオウン(A s)の約10年後の姿。少女時代苦手だった広域魔法も上達しており、現在では優秀な執務官となっている。 エリオとキャロの二人を養子として引き取っており、少々過保護気味ではあるが本物の母親のように振舞っている。 【クロスにおける原作との相違点】 仮面ライダーカブトの世界観における第97管理外世界で、ZECTに入隊している。 この作品におけるフェイトの時期は、エリオとキャロの二人を保護してから、二人が管理局に入隊するまでの間。 それ故に他の作品におけるエリオとキャロが時空管理局に所属している事を知らない。 【面識のある参加者】 名前 呼び名 関係 高町なのは(A s) なのは(当時) 約10年前の親友 高町なのは(StS) 高町教導官(公用)なのは(私用) 10年来の親友 フェイト・T・ハラオウン(A s) ― 約10年前の自分 八神はやて(A s) はやて(当時) 10年前の親友の姿 八神はやて(sts) 八神二佐(公用)はやて(私用) 10年来の親友 ユーノ・スクライア ユーノ 10年来の仲間 クロノ・ハラオウン クロノ提督(公用)クロノ、お兄ちゃん(私用) 10年来の仲間 シグナム シグナム 10年来の仲間 ヴィータ ヴィータ 10年来の仲間 シャマル シャマル先生 10年来の仲間 ザフィーラ ザフィーラ 10年来の仲間 エリオ・モンディアル エリオ 大切な子供 キャロ・ル・ルシエ キャロ 大切な子供 矢車想 矢車さん 信頼できる仲間で上官 【技能・能力】 能力名 内容 魔法 自身の魔力を用いて起こす技能。多種をまんべんなくこなすが、攻撃魔法に傾倒する面がある デバイス 操作デバイスを扱う技能。特にバルデッシュ、バルディッシュ・アサルトの扱いに優れる
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ヴィヴィオ「ママだ、フェイトママ~」 フェイト「うふ、ヴィヴィオはいい娘だね。将来はきっといいお母さん になるよ。」 ヴィヴィオ「お母さん・・?」 フェイト「うん、ヴィヴィオもいずれ恋をして結婚をして、お母さんになるんだ。 それでも、私はいつまでもヴィヴィオのママでいてあげるからね☆」 ヴィヴィオ「あは、フェイトママとずっと一緒。」 フェイト「そうだね、ずっと一緒。」 ヴィヴィオ「なのはママも一緒。」 フェイト「!?」 ヴィヴィオ「ねぇねぇ、フェイトママ。なのはママは今どこ~? どこなの~!?」 フェイト「・・・・・」 ヴィヴィオ「フェイトママ・・?」 フェイト「なのはママはね、いなくなっちゃったんだ。 遠い遠い世界に。だからもう帰ってこないんだ・・」 ヴィヴィオ「え・・なのはママいない・・もう会えない?」 フェイト「・・・うん、でも安心してヴィヴィオ。私は、フェイトママはずっとここにいるから。」 ヴィヴィオ「いやだぁ!なのはママがいなきゃ嫌だぁ!」 フェイト「ヴィヴィオ、我侭はダメだよ?いい子だからこっちにおいで」 ヴィヴィオ「なのはママの方がいい!なのはママに会いたいよぉ!」 フェイト「だから、言うことを・・・きいて?」 ヴィヴィオ「言うこと聞いたら、なのはママに会えるの?」 フェイト「さっきからなのはママなのはママなのはママって・・・ そんなに会いたいのかな??ヴィヴィオはそんなになのはママと会いたいのかな!!!」 ヴィヴィオ「ふぇい、と・・ママ?」 フェイト「うふふふふふふ!!!あーっははははははははははは!! そっかそっか、結局わたしは死んでしまったなのはにすら勝てないんだね!!」 ヴィヴィオ「うそ・・なのはママ・・死んだ?」 フェイト「そうだよ!ヴィヴィオ!!なのはママはね、フェイトママが殺しちゃったんだ。 だからもうこの世界にはいないの。存在しないの。でもね、ヴィヴィオがそんなに会いたい ってなら、その望み叶えてあげてもいいんんだよ!!?いーっひひひひひひひひひひ!!!」 ヴィヴィオ「フェイトママどうしたの・・いつもと違う・・・恐いよ。」